アクテムラ・ケブザラ使用中の方、主治医の先生から注意事項の説明を受けていますか?
- 2023.08.21
2023.06.18のブログで、『アクテムラ・ケブザラ投与中、どのようにして関節リウマチを評価するのか?』と題してお話を致しました。今回は、その副作用の面に注目してみようと思います。
アクテムラとケブザラは、ともにIL-6阻害薬に分類される生物学的製剤です。IL-6は色々な細胞から分泌され、また色々な細胞に作用するのですが、肝臓に働きかけて肝細胞でのCRP(炎症反応のマーカーの一つです)産生を促します。また、熱の産生にも関わります。
アクテムラ・ケブザラを投与すると、IL-6の作用が阻害されるため、その結果熱の産生やCRP産生が強力に抑制されます。そうすると、どのような事態が想定されるでしょうか?
IL-6阻害薬を含めた生物学的製剤には免疫を抑える作用があり、免疫抑制薬と呼ばれます。そのため、色々な細菌やウイルスなどの感染症に注意する必要があります。感染症にかかると、例えば風邪をひいた時を想像していただければ分かるように、のどの痛みや咳だけでなく、しばしば発熱を伴います。発熱は体にとって重要なアラームサインです。皆さんも、熱が出れば「早く受診しないと」という気持ちになると思います。
しかし、IL-6阻害薬を投与していると、熱産生が強力に抑制されるため、感染症にかかっても熱が出ないということがしばしばあります。これはつまり、体にとってのアラームサインがかき消されてしまうことを意味します。感染症にかかっているにも関わらず熱が出ないために受診行動が遅れ、感染症が重症化してしまう恐れがあるということです。また、受診したとしても、CRP産生が強力に抑制されるため、感染症にかかっていてもCRPが正常であることが多く、軽症と誤った判断をなされてしまう恐れもあります。
このような理由から、アクテムラ・ケブザラを投与中の方は特に感染症に注意が必要です。のどの痛み・咳・腹痛・下痢・皮膚の発赤など体調変化があれば、熱がないからといって軽症と自己判断せずに早めに関節リウマチの主治医に相談するようにしてください。また、そのような症状がある時には、アクテムラ・ケブザラは必ず中止するようにしてください。
患者さん自身が薬剤について正しい知識を身につけることも、関節リウマチという病気と正しく向き合うコツの一つだと思います。