血液検査だけで関節リウマチと診断できる?

  • 2023.04.30

 関節リウマチ(RA)の診断は決して容易ではありません。血液検査をすれば簡単にRAかどうか診断できると思って来院される方もおられますが、リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体の陽性率は、RAの約7割ですから、これらが陰性であってもRAを否定することはできません。(=偽陰性)  また、RFはB型肝炎や感染性心内膜炎、シェーグレン症候群などの他の膠原病でも陽性となりますし、時に何の病気のない方でも陽性となることがあります。(=偽陽性)  健診や人間ドックのオプションでRFが含まれている...

メトトレキサートが使えない時どうする?

  • 2023.04.29

 関節リウマチ(RA)治療において、メトトレキサート(MTX)はアンカードラッグの位置付けです。MTXをいかに使いこなすか?これがRA診療の最も大事な部分であると言っても過言ではありません。  しかし、先日にもブログで書いたように、患者さん全員に使用できるわけではありません。妊娠中や授乳中の方、高度な腎障害のある方、高度な間質性肺疾患がある方などには投与することはできません。では、そのような方にはどのような薬剤を使用すれば良いのでしょうか?生物学的製剤(BIO)やJAK阻害薬を直ちに使用...

この時代に関節リウマチを発症された方へ

  • 2023.04.28

 関節リウマチ(RA)治療は、この10年20年で劇的に進歩しました。現在RA診療のアンカードラッグの位置付けであるメトトレキサート(MTX)が本邦で承認されたのは1999年でしたが、当初は第一選択薬として使用することはできず、最大投与量も8mg/週まででした。  MTXは2011年に16mg/週まで増量することが可能となり、2022年には皮下注製剤であるメトジェクトも承認されました。  MTXが効果不十分な場合には、生物学的製剤(BIO)やJAK阻害薬を検討することとなりますが、B...

5月5日は…

  • 2023.04.28

奈良時代に中国より伝わった「端午の節句」。 季節の変わり目には邪気が寄りやすいので、季節ごとの飾りとお供えものをして厄払いをし、無病息災を願う風習がありました。 当院に通われている患者さんやご家族の息災を願って、スタッフみんなで兜を折りました。 色とりどりの兜が飾ってありますので、ぜひご覧ください。 ...

痛みを解剖する

  • 2023.04.27

 関節リウマチ(RA)診療において、患者さんの訴えの最も多くを占めるものは『痛み』です。RAは関節炎をきたす疾患なので当然と言えば当然のことです。しかし、その痛みの全てがRAに起因するものではありません。「足がつる」というのをRAのせいだと思い込んでいる方もおられますし、ヘバーデン結節やブシャール結節などの変形性関節症(OA)による痛みを、RAによるものと思い込んでいる方もおられます。  我々リウマチ医(リウマチ医に限りませんが・・)は、患者さんの訴えを鵜呑みにしてはいけません。その痛み...

メトトレキサートを正しく使おう!

  • 2023.04.25

 メトトレキサート(MTX)は、関節リウマチ(RA)診療において中心的な役割を果たす薬剤であることは論を俟ちません。RAと診断されれば、禁忌事項および年齢・腎機能・肺合併症を踏まえた上、MTX投与が可能かどうかを考慮します。禁忌事項に該当しない若年で腎機能が正常な肺病変のない患者さんには、文句なしにMTXを投与することができます。  本邦でのMTX診療ガイドライン2016は、今年2023年に『手引き』と名称を変え改定されましたが、MTXは10~12mg/週まで増量することが記されています...

自身の腎機能(じんきのう)を把握していますか?

  • 2023.04.21

 関節リウマチ診療において、メトトレキサート(MTX)は中心的な役割を果たす薬剤です。しかし、リウマチ患者さん全員に使用して良いというものではありません。例えば、妊娠中や授乳中の方は使用できませんし、間質性肺疾患などの肺病変が高度の方にも使用できません。  尿を作る臓器である腎臓(じんぞう)の働き(=腎機能)も、MTXを使用できるかどうかに大きく関わってきます。皆さん、eGFR(イー・ジーエフアール)というものをご存知でしょうか?腎機能をみる指標の一つですが、eGFRが30未満であればM...

帯状疱疹ワクチン接種について

  • 2023.04.20

 当院では、帯状疱疹ワクチン(シングリックス)の接種が可能です。 帯状疱疹の発症に関与しているのは、水ぼうそうと同じウイルスです。幼い頃に水ぼうそうにかかったことのある方は多いと思いますが、水ぼうそうが治っても、このウイルスは神経節に潜伏した状態で体内に残ります。 普段は免疫力によってウイルスの活動が抑えられているため、帯状疱疹を発症することはありませんが、 加齢や疲労やストレスなどが発症のきっかけになります。また、関節リウマチなどの病気に対して免疫抑制剤やステロイドを使用されている方や、抗が...

他院通院中のリウマチ患者さんへ 「主治医の先生に何だか申し訳なくて・・」

  • 2023.04.16

 「主治医の先生に何だか申し訳なくて・・」これは病院やクリニックを替わろうとする際に、しばしば患者さんが言われるフレーズです。特に、同じ医師に何年も診てもらっている場合には、このような傾向が強いようです。人であれば当然の反応ですから、それを否定するつもりは全くありません。  ここで私が言いたいことは、自分の目で医師を選んで欲しいということです。患者さんは医師を選ぶことはできますが、医師には患者さんを選ぶことはできません。以前のブログにも書きましたが、医療機関や医師を選ぶ特権は、患者さんに...

内面的なことを久しぶりに書きました。

  • 2023.04.14

 私のブログには何度か芥川龍之介が登場している。  芥川の作品は、『蜘蛛の糸』にあるようにガラス細工のような精巧かつ美しく繊細な作品があるかと思えば、『歯車』のように自らに迫り来る死というものに対する戦慄が表現されたものもあるし、創作における自尊心を主人公である滝沢馬琴に自らを投射した『戯作三昧』など、これほどまでに作風の異なるものが一人の人間によって書かれたという点が私を魅了するのであろう。  『或日の大石内蔵之助』での「微に漂っている墨の匂いを動かす程の音さえ立てない」などとい...