血液検査だけで関節リウマチと診断できる?

  • 2023.04.30

 関節リウマチ(RA)の診断は決して容易ではありません。血液検査をすれば簡単にRAかどうか診断できると思って来院される方もおられますが、リウマトイド因子(RF)抗CCP抗体の陽性率は、RAの約7割ですから、これらが陰性であってもRAを否定することはできません。(=偽陰性)

 また、RFはB型肝炎や感染性心内膜炎、シェーグレン症候群などの他の膠原病でも陽性となりますし、時に何の病気のない方でも陽性となることがあります。(=偽陽性)

 健診や人間ドックのオプションでRFが含まれていることがありますが、その特異度を鑑みれば、症状のない方を対象にRFを一律に測定する意義は乏しく、偽陽性であれば不要な受診に繋がります。リウマチ専門医としては、症状のない方を対象とした健診や人間ドックでのRF測定はおすすめできません。

 一方、抗CCP抗体はRFと異なり、RA以外の病気で陽性となることは少ないのですが、RA発症の約10年前から高値となると言われており、それだけでRAと診断できるものではありません。

 つまり、血液検査で陽性だからRA、陰性だからRAではないと100%判断できるマーカーはなく、問診・身体診察・他の血液検査項目・尿検査・関節エコー・レントゲン検査などを組み合わせて、同様の症状を呈する他の疾患を除外した上で、総合的にRAかどうかを判断します。

 「同様の症状を呈する他の疾患」というのがこれまた非常に多くありまして、日常診療では20以上の疾患を頭に想起しながら診察にあたります。もし、RAかどうかを血液検査だけで診断されてしまっている方がいるとすれば、RAを見過ごされているかもしれませんし、RAではないのにRAと誤って診断されているかもしれません。

 手指の関節痛があり、RFが高いというだけでRAと診断され、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬を投与されるケースにしばしば遭遇します。そのようなケースでは、「同様の症状を呈する他の疾患」の除外(=鑑別診断)がなされていないことがほとんどです。種々の副作用がある抗リウマチ薬をRAでないのに安易に投与することは厳に慎まなければなりません。

 RAと診断された場合には、その医師がどのような経緯で診断に至ったのか?また、その説明に自分自身がきちんと納得できたのかどうかを是非大事にしてください。