メトトレキサートが使えない時どうする?

  • 2023.04.29

 関節リウマチ(RA)治療において、メトトレキサート(MTX)はアンカードラッグの位置付けです。MTXをいかに使いこなすか?これがRA診療の最も大事な部分であると言っても過言ではありません。

 しかし、先日にもブログで書いたように、患者さん全員に使用できるわけではありません。妊娠中や授乳中の方、高度な腎障害のある方、高度な間質性肺疾患がある方などには投与することはできません。では、そのような方にはどのような薬剤を使用すれば良いのでしょうか?生物学的製剤(BIO)やJAK阻害薬を直ちに使用するのでしょうか?

 答えはノーです。BIOやJAK阻害薬はRAと診断された際に最初に使用する薬剤ではありません。その理由にはいくつかありますが、非常に高額であるという医療経済での面が大きいように思われます。MTXを使用できない患者さんには、MTXよりも効果はマイルドではありますが、サラゾスルファピリジン(先発品:アザルフィジン)・イグラチモド(先発品:ケアラム)・ブシラミン(先発品:リマチル)・タクロリムス(先発品:プログラフ)のいずれか(他にレフルノミドなどもありますが・・)を検討します。

 この数年の私個人の処方傾向で言えば、ブシラミンやタクロリムスを新規に処方することは激減しております。ブシラミンは、時にネフローゼ症候群という高度のタンパク尿を呈し、ブシラミンを中止してもタンパク尿が消失するまで数ヶ月要することがあります。タクロリムスは、ジェネリックが登場してかなり安価になったとはいえ、上記の他の3剤と比較しても高額(薬剤の血中濃度も測定する必要があります)であることがその理由です。

 つまり、MTXを使用できない患者さんには、最近の私の傾向として、サラゾスルファピリジン(SASP)かイグラチモド(IGU)のどちらかで治療を開始することが多くなっています。両者をどう使い分けるかですが、IGUはもともとNSAID(ロキソニンやボルタレンなどが痛み止めが含まれます)として開発された経緯があるため、腎障害のある方にはSASPを優先して使用しています。また、SASPにはニューモシスチス肺炎(PCP)予防効果もあるため、PCPのリスクとなる高齢者でより優先して使用しています。