メトトレキサートを正しく使おう!

  • 2023.04.25

 メトトレキサート(MTX)は、関節リウマチ(RA)診療において中心的な役割を果たす薬剤であることは論を俟ちません。RAと診断されれば、禁忌事項および年齢・腎機能・肺合併症を踏まえた上、MTX投与が可能かどうかを考慮します。禁忌事項に該当しない若年で腎機能が正常な肺病変のない患者さんには、文句なしにMTXを投与することができます。

 本邦でのMTX診療ガイドライン2016は、今年2023年に『手引き』と名称を変え改定されましたが、MTXは10~12mg/週まで増量することが記されています。私の場合、MTX開始用量は8mg/週であり、2週間後には12mg/週に増量し、2~3ヶ月後に効果判定を行います。

 しかし、MTXを十分量投与できるにも関わらず中途半端な量しか投与されていないケースにしばしば出くわします。もちろん、消化器症状や肝障害などによりMTXを増量できないそれ相応の理由があれば納得できるのですが、そうでないことが多いのです。おそらく、MTX投与量が増えればその副作用発現が大きくなるという懸念がその理由ではないかと思われます。しかし、MTXによる重篤な血球減少のリスクとなるのはその投与量ではなく、腎機能低下例に対する投与が最大のリスクですし、MTXによる間質性肺炎(MTX肺炎)は用量非依存性です。また、MTX関連リンパ増殖性疾患のリスクについても、MTX投与量に関してはまだ結論が出ていません。

 MTX投与量が中途半端な場合には、そのポテンシャルを存分に発揮することができません。我々リウマチ専門医が、きちんとMTXを使いこなせなければ、不要な生物学的製剤やJAK阻害剤の導入に繋がり、患者さんの自己負担および医療経済増大を招くことになります。

 MTXは最もマネジメントが難しい抗リウマチ薬の一つであるのは事実ですが、MTXを不必要に恐れてはいけません。MTXをしっかり使いこなすためには、MTXによる副作用からリウマチ医が逃げてはいけません。医師がMTXと向き合うことができなければ、患者さんがMTXと正しく向き合うことができることはあろうはずもありません。