痛みを解剖する

  • 2023.04.27

 関節リウマチ(RA)診療において、患者さんの訴えの最も多くを占めるものは『痛み』です。RAは関節炎をきたす疾患なので当然と言えば当然のことです。しかし、その痛みの全てがRAに起因するものではありません。「足がつる」というのをRAのせいだと思い込んでいる方もおられますし、ヘバーデン結節やブシャール結節などの変形性関節症(OA)による痛みを、RAによるものと思い込んでいる方もおられます。

 我々リウマチ医(リウマチ医に限りませんが・・)は、患者さんの訴えを鵜呑みにしてはいけません。その痛みがRAによるものなのかどうかしっかり見極めることが重要です。その痛みは、炎症性なのか非炎症性(更年期障害による関節痛など)なのか?炎症性であったとして、他の原因(痛風などの結晶性関節炎や外傷など)がたまたま合併したものではないのか?

 炎症性か非炎症性かを判断する上で、関節エコーは非常に有用な検査です。痛みのある部位にエコーを当て、パワードプラにて血流シグナルがあるのかどうかで判断することができます。股関節など、体表から深部に関節がある場合には炎症があっても血流シグナルが出にくいので判断が困難な場合がありますが、侵襲なくできますので日常診療には欠かせない検査です。

 話は変わりますが、先日福岡で開催された第67回日本リウマチ学会総会・学術集会へ出席して来ました。その中で、『滑膜生検』の話が出てきました。滑膜を採取し、その所見を踏まえた上で患者さん毎に最適な治療を提供する未来が遠くないと感じました。『滑膜生検』を施行する上でも関節エコーは必須のモダリティです。医師という職業は、油断するといつの間にか浦島太郎化してしまう世界です。専門医の中でも雲泥の差があります。必死に頑張っていこうと思う毎日です。