生き方の美学(続編)

  • 2024.03.08

 昨日の続編です。と言っても、今日の題材は日本酒です。

 早速質問ですが、下の日本酒のラベルを見た時に、即座にこれを買おうと思う方はどれぐらいおられるでしょうか?おそらくほとんどおられないと思います。それは、このラベルを見ても、このお酒がどのような香り・味わいのものなのか、日本酒の知識がない限り全く分からないからです。

 日本酒の勉強をしていると、このラベルには非常に多くの情報が込められていることに気付きます。「純米吟醸」と書いてありますが、精米歩合が50%ですので、本来「純米大吟醸」と名乗れるものです。「CEL-24酵母」を使用していることから、リンゴや洋ナシのような吟醸香の高いものと分かります。「日本酒度」が-15ですから、甘みがかなり強く感じられ、「酸度」が2.1と高いことから、リンゴ酸による酸味がかなり強く感じられると推察されます。つまり、リンゴの甘酸っぱさが詰まったようなお酒であるということです。また、「生酒」ですからそれらが非常にフレッシュに感じられるということです。「原酒」であるにも関わらずアルコール分が14%と低値であることから、低温で醸すことによりゆっくり発酵させ、ワインに近いものを目指してつくられたお酒であると推察されます。

 ここで私が言いたいことは、作り手がなぜこのようなラベルにしたのかということです。日本酒ビギナーや女性におそらく高評価を得られるであろうこのお酒を本気で売りにいこうとするのであれば、このようなラベルにはしないでしょう。このラベルには、「このお酒がどのようなお酒か述べなさい」というような作り手からのメッセージが込められているように思うのです。「この問題を解けた者だけどうぞお飲みください」というような・・・私のこの見解は的外れかもしれませんが、もしそれが的を得ていたとすれば、この作り手は、昨日のブログにも書きました「こだわり」の塊のような人なのでしょう。美学を貫き通せる人は本当に格好いいと思います。