関節リウマチ診断の難しさ(その2)
- 2024.08.10
昨日は、関節リウマチ診断の難しさ(その1)として、関節痛+リウマトイド因子(RF)高値という理由だけで関節リウマチ(RA)と誤診されてしまっているケースを紹介しました。
今回は第2弾です。高齢者に急性の経過で(しばしばある日突然)両肩関節痛や両肩関節可動域制限(右か左どちらか一方ではなく、左右に症状の程度の差はあったとしても両側性というのが重要です)を認めた場合、リウマチ性多発筋痛症(PMR)という疾患が鑑別に挙がります。PMRという疾患は、高齢発症関節リウマチとしばしば鑑別が難しく、最初はPMRと診断しても治療経過の中で診断がRAに変わるということはリウマチ専門医なら何度も経験があるはずです。
このように、PMRとRAの鑑別が困難なのは事実なのですが、問題はですね・・・両肩関節痛や両肩関節可動域制限+MMP-3高値という理由だけで、RAと誤診されてしまっているケースがあるということです。
MMP-3は滑膜炎が存在すると高くなるマーカーではありますが、RF同様にRAだけで高くなるものではありません。PMRでも高くなりますし、乾癬性関節炎やグルココルチコイド(ステロイド)の使用、そして腎機能障害などでも高値となります。実はこの点を理解していない医師がほとんどなので、MMP-3が高値ならRAだと短絡的に診断されてしまっているケースが散見されます。
その結果、どんどこどんどこ抗リウマチ薬が投与されるものの症状は改善せず、しかも入院を要するような副作用が発現してしまったという例を何度かみてきました。
ちなみに、RAであっても必ずMMP-3が上昇するわけではなく、肩・股・膝関節などの大関節に炎症があれば上昇しやすいのですが、手指・手・足趾などの小関節に炎症があってもほぼ上昇しないので、MMP-3が正常だからといってRAではないとは言えないですし、またRAの活動性が落ち着いていると判断してはいけません。
PMRとRAの鑑別は困難ですが、末梢関節炎の存在、つまり手指・手関節、足趾関節などに関節炎があるかどうかが重要なポイントの一つです。末梢関節炎が全くなく、肩の症状だけでRAと診断することはほぼない(RAに特異度の高い抗CCP抗体が高値であれば別ですが・・・)と思われます。したがって、しっかり触診をして手指・手関節、足趾関節に腫れがないかどうか、そして関節エコーで同部に滑膜炎の所見がないかどうかを確認する作業が大事になります。
前回でもお話した通り、触診と関節エコーをしていない医師には、RAを正しく診断できませんし、そして正しく治療することはできません。あなたの人生を変えるのは、あなたの決断一つです。