関節リウマチと肝臓

  • 2024.09.14

 「肺」「腎」に続いての臓器シリーズ第3弾です。今回は「肝臓」についてお話をしましょう。

 肝障害は、抗リウマチ薬の副作用としてしばしばみられるものです。そのため、薬剤の添付文書にては定期的に肝機能をチェックするようにという文言が入っています。

 例えば、イグラチモド(ケアラム®)では、「本剤投与前には必ず肝機能の検査を実施すること。また、投与中は臨床症状を十分に観察するとともに、投与開始後最初の2ヵ月は2週に1回、以降は1ヵ月に1回など定期的に肝機能検査を行うこと」、サラゾスルファピリジン(アザルフィジン®)では、「本剤投与開始前には、必ず血液学的検査(白血球分画を含む血液像)、肝機能検査及び腎機能検査を実施すること。投与中は、AST、ALTの著しい上昇等を伴う肝炎、肝機能障害、黄疸があらわれることがあり、肝不全、劇症肝炎に至るおそれがあるので、臨床症状を十分観察するとともに、定期的に(原則として、投与開始後最初の3ヵ月間は2週間に1回、次の3ヵ月間は4週間に1回、その後は3ヵ月ごとに1回)、血液学的検査及び肝機能検査を行うこと」とそれぞれの添付文書には記載されています。

 つまり、関節リウマチ(RA)診療においては、その有効性の評価のみならず、肝障害などの副作用にも常に留意が必要となります。肝臓も前回の腎臓同様、「物言わぬ臓器」でして、よっぽどの肝障害が生じていない限り、ほとんど無症状、あっても軽度の倦怠感ぐらいの症状しか出ません。したがって、肝障害の有無は自覚症状に頼ることができず、定期的に血液検査をして肝機能をチェックすることが肝要となります。

 アンカードラッグであるメトトレキサート’(MTX)でも、用量依存性に肝障害が発現しやすい傾向があります。ただし、過度にその副作用を恐れるがあまりに、中途半端な用量で関節炎をしっかり抑えることができないという状況(「メトトレキサート・・・本当にその量でいいのか?」(2024.09.10)を参照ください)は絶対に避けなければなりません。肝障害が発現しても、MTXを減量もしくは一時的に休薬すればほとんどの場合それは改善します。

 優秀なリウマチ専門医の一条件は、薬剤の「有効性」と「安全性」のバランス感覚に優れた医師ということができるでしょう。