オームの法則
- 2025.11.30
救急外来には緊急性の高い病態を有する患者さんが来院される。いかにも重篤だと一目で分かる患者さんもいれば、ウォークイン SAH (歩いてやって来るクモ膜下出血)のように緊急性があるにも関わらず静かに息を潜めてやって来る患者さんもいる。そのような患者さんは見逃される可能性があり、医師は常に緊張を強いられる。
救急外来において緊急性の高い病態の一つにショックがある。ショックは血圧が著しく低下した状態である。さて、皆さんはオームの法則を覚えているだろうか?私は中学2年生の時に習った記憶があるが、「電圧(V)=電流(I)×抵抗(R)」である。この式は、ショックの病態を理解する上でも非常に有用であり、「血圧(V)=心拍出量(I)×末梢血管抵抗(R)」と表すことができる。また、心拍出量は1回拍出量×心拍数であるから、「血圧=1回拍出量×心拍数×末梢血管抵抗」である。これは、血圧を因数分解していることを意味する。つまり、ショックの際にはこの3つの素数(1回拍出量、心拍数、末梢血管抵抗)のいずれかまたは複数が低下していることを意味する。もし、1回拍出量が下がり、心拍数・末梢血管抵抗ともに上昇しているのであれば、それは循環血液量減少性ショックと判断できる。循環する血液量が減少するということは、体のどこかに出血するような病態(消化管出血や、外傷なら肝損傷、骨盤出血など)が存在するということである。このような生死がかかる場面で医師は頭をフル回転させ、病態解明のために必要な検査をオーダーし、適切な処置が何かを決断する。
因数分解はこのように数学の世界のみで使用するものではない、物事の原因を深掘りし同定する過程で正しく因数分解できるかどうかがその成否を左右する。これは論理展開である。
経営もまさに因数分解である。売上は決して順調に伸びるわけではない、順調に伸びていたのに急落することもある。そのような時、正しく因数分解できるかどうかが極めて重要である。しかも、「経営は生き物」である。素数同士は本来独立したものであるが、経営においてはこれらが複雑に絡み合い、原因のように見えて実は結果であったり、その逆ということもある。それを読み取る力が突破力なのだ。真犯人と確証を持てなくとも、そうだと仮定してその改善に全力投球する。それを中途半端にしてしまうと、結果が改善されなかった時に単に努力が足らないのか、そもそも全力投球しても改善されないものなのかの判断ができなくなるため、「全力投球」が重要である。
さあ、今年も残るところあと1ヶ月、11月の月次データをもとに全力を尽くそう!!
- この文章を拝読し、非常に深い洞察と論理的思考の重要性を感じました。筆者は、救急医療の現場での緊張感や複雑な病態の理解を、数学の因数分解の概念に例えて説明しており、非常にわかりやすく、かつ示唆に富んでいます。特に、医療現場においても経営においても、「原因を正確に見極めること」が成功の鍵であるというメッセージは、非常に共感できます。経営の側面では、売上の変動を単純に捉えるのではなく、その背後にある複数の要因を正しく因数分解し、原因と結果を見極めることの重要性を強調している点が印象的です。また、「経営は生き物である」という表現から、変化に柔軟に対応し、常に状況を見極めながら最適な判断を下す必要性を感じました。全力投球の姿勢も、結果に対して責任を持ち、改善策を模索し続ける姿勢の大切さを示しており、非常に励まされる内容です。総じて、医療と経営の両面からの視点を融合させた、非常にプロフェッショナルでありながらも親しみやすいメッセージだと感じました。今後の経営や現場運営においても、因数分解的な思考と全力投球の姿勢を大切にされることが、さらなる成功につながると確信いたします。
- この文章の筆者は、クリニックの経営者として、医療現場の緊迫した状況や経営の複雑さを深く理解し、冷静かつ論理的に状況分析を行う必要性を認識していると推察されます。具体的には、筆者は救急外来の患者対応において、緊急性の高い病態を見逃さないように注意を払うとともに、医師やスタッフが常に緊張感を持って対応している状況を理解しています。また、ショックの病態解明や治療方針の決定において、因数分解の考え方を用いて原因を深掘りし、適切な処置を迅速に行うことの重要性を認識しています。さらに、経営面では、売上や経営状況の変動を因数分解の視点から分析し、原因を正確に特定することの重要性を理解しています。経営は「生き物」であり、複雑に絡み合う要素を見極め、仮説を立てて全力投球する姿勢を持つことが成功の鍵と考えているようです。総じて、筆者は医療現場と経営の両面において、論理的思考と冷静な分析力を駆使し、状況に応じた適切な判断と行動を取ることを重視している、非常にプロフェッショナルな立場にあると推察されます。