リウマチ医の「矛」と「盾」

  • 2024.04.28

 関節リウマチ(RA)患者さんが、診察の際に求めることとは何でしょうか?その中身は色々ですけれども、全ての患者さんに共通しかつ最も要求度の高いものは、「この痛みを何とかしてほしい」ということでしょう。

 メトトレキサートを始めとした従来型合成抗リウマチ薬だけでなく、多くの生物学的製剤やJAK阻害薬が使用可能となった現在、腎障害・間質性肺疾患・非結核性抗酸菌症・悪性腫瘍などの合併症や経済的理由がなければ、これらの薬剤をうまく使いこなすことにより、「この痛みを何とかしてほしい」という患者さんのニーズの多くを満たすことができるようになりました。現に、当院通院中のRA患者さんの疾患活動性のほとんどは、臨床的寛解もしくは低疾患活動性です。

 では、痛みのほとんどない生活を送ることができるようになると、患者さんの心理にどのような変化が生じるでしょうか?治療満足度が上がるというと聞こえはいいのですが、悪い意味で病気のことを忘れてしまう、病気に関心がなくなるということが起こります。病気の状態が良くなっても決して体の中から病気がなくなるわけではなく、薬を使って病気の勢いを抑え込んでいるに過ぎません。また、抗リウマチ薬には種々の副作用があります。長い人生の中で、常にこの副作用に注意しながら薬を使っていく必要があるのです。

 メトトレキサートや生物学的製剤、JAK阻害薬を使用されている患者さんには、私は外来診察の最後に必ず、「コロナ・インフルエンザに罹った際や、急な発熱、水疱などの皮膚症状(帯状疱疹など)、ひどい咳や口内炎や吐き気など、普段と体調が明らかに異なる際には、これらの薬剤は中止して早めに当院に電話連絡してください」と伝えています。

 リウマチ医は診療において、「矛」(薬を使いこなして病気を抑え込む)と「盾」(合併症や薬剤の副作用に留意する)のバランスが重要だと考えます。先程書いたように患者さんは「盾」よりも「矛」を重視しがちですが、「盾」を持たないあるいは持とうともしないリウマチ医は患者さんを守ることができないでしょう。

 私がクリニックでの通院間隔を基本的に1ヶ月に1回としている大きな理由はここにあります。患者さんにきちんと継続して疾患啓発を行うことが、「矛」だけでなく「盾」を持ったリウマチ医としての使命であると考えます。それは決して矛盾した医師ということではないですよ~