関節リウマチ診断の難しさ(その3)
- 2024.08.14
関節リウマチ診断の難しさ(その1)(その2)では、関節リウマチ(RA)ではないにも関わらずRAと誤診されてしまった症例を紹介しました。今回はその逆のケースを紹介しましょう。
前回の(その2)では、高齢発症関節リウマチ(EORA)とリウマチ性多発筋痛症(PMR)の鑑別はしばしば困難な場合があると述べました。
PMRは高齢者に急性の経過(しばしばある日突然)で両肩関節痛や両肩関節の可動域制限が出現し、時に発熱や体重減少、抑うつ気分などの症状を伴うものですが、リウマチ・膠原病領域においてPMRは最も誤診されやすい疾患の一つと言ってよいでしょう。それは、PMRに特異的な症状や検査値異常というものは一切なく、その診断の際には同様の症状や検査値異常を呈する他の疾患を除外することが重要であるにも関わらず、高齢者にあちこちの痛みが生じCRP上昇を伴っていればPMRと診断してしまう医師がほとんどだからです。
私の経験上も、PMR疑いあるいはPMRとして紹介されたケースの過半数はPMR以外の疾患です。中には、感染性心内膜炎や腸腰筋膿瘍などの感染症だったということもあります。PMRの治療にはグルココルチコイド(GC:ステロイド)が使用されますが、GCは感染症を増悪させるため安易にPMRと診断してはいけません。
感染症以外の疾患で、最もPMRと誤診されやすい疾患が前述の高齢発症関節リウマチ(EORA)です。PMRと診断されている患者さんの中には、一定数の割合で真の診断がEORAの方がいます。
PMRとEORAは治療内容が異なります。PMRとEORAはリウマチ専門医でも鑑別が難しいものです。もし、リウマチ専門医でない医師にPMRと診断された場合には、リウマチ専門医に相談する勇気を是非持ってください。ご家族の方も、是非ご自身のお父さん、お母さんの病状に関心を持ってください。自らの家族を守れるのはあなたしかいません。