JAK阻害薬の長所

  • 2024.10.02

 本日は、JAK(ジャック)阻害薬についてお話しましょう。

 本邦で使用可能なJAK阻害薬は、トファシチニブ(ゼルヤンツ®)、バリシチニブ(オルミエント®)、ペフィシチニブ(スマイラフ®)、ウパダシチニブ(リンヴォック®)、フィルゴチニブ(ジセレカ®)と5剤あります。

 JAK阻害薬は生物学的製剤(BIO:バイオ)と同様、非常に治療効果の高い薬剤です。ただし、関節リウマチ(RA)と診断された方が最初から使用できる薬剤ではありません。メトトレキサートなどの従来型合成抗リウマチ薬を投与しても効果不十分であった場合に検討される薬剤です。

 BIOは注射製剤(点滴製剤もしくは皮下注射製剤)であるため煩わしさがありますが、JAK阻害薬は内服薬(飲み薬)であり、かつ4剤は1日1回内服(トファシチニブのみ1日2回)でよいため、非常に簡便であるというメリットがあります。

 また、BIOには効果発現までに数週間や場合によっては数ヶ月と時間を要するものが中にはありますが、JAK阻害薬はいずれも効果発現が速いというところが最大の利点でしょう。

 RAの発症様式は個人によって様々です。高齢発症関節リウマチ(EORA)の場合、今まで日常生活動作が完全に自立していたにも関わらず、1~2週間で介助を要する状態になることがしばしばあります。このようなケースでは、治療にスピード感が求められます。チンタラチンタラ治療しているようでは、介助する方にも精神的・肉体的負担がかかることになります。

 個人的な見解にはなりますけれども、早急に全身状態を立ち上げる必要があるような症例では、私はBIOよりもJAK阻害薬を優先して使用しています。

 当院が開院してから2年半が過ぎました。最近は、他院で治療が始まっても効果がすぐに出ないため当院を受診される高齢発症関節リウマチの方が増えてきました。JAK阻害薬も色々と留意しなければいけない副作用はありますが、こういった薬剤の長所を理解し患者さんを適切に選んで使用することは、リウマチ専門医の使命の一つだと私は考えています。