金紋錦の歴史に准える
- 2022.11.23
松本では日本酒を買って帰ることができなかった。講演会等で遠征をして、日本酒を買って帰ることがなかったのは初めてではなかろうか?
帰宅後、酒造数全国第2位を誇る長野県の日本酒を知ろうとしなかったことを恥じた自分は、知らず知らずのうちに酒造さんのホームページ閲覧に走っていた。
検索条件は、私の大好きな「生酛造り」のお酒であること(生酛は日本酒全体の約1割に過ぎない)と地元の酒米で醸したお酒であることである。
生酛造りについては、すでにブログ内で多々登場しているのでここでは割愛する(割愛の本来の意味は、「惜しいものを手放すこと」である)
地元の酒米・・・滋賀県では、「玉栄」「吟吹雪」「渡船」であり、短稈渡船(渡船2号)は山田錦の父親である。一時絶滅の危機に瀕したものが、人々の努力により大きく復活をとげたものもある。「渡船」はまさにそうである。長稈渡船(渡船6号)は、その名の通り背丈が高く、風に弱いため栽培が困難である。同じ造りであっても酒米が異なれば味わいや香りは大きく異なる。
「金紋錦」という酒米を今回初めて知った。「たかね錦」と「山田錦」を親に持つ。色々と調べてみると、その歩んだ道は決して華やかなものではない。1970年代後半に品種開発された「美山錦」(生産量は、山田錦、五百万石に次ぐ第3位)に押され、長野県内で買い手が皆無となったところ、石川県の福光屋(初めて飲んだ古酒は、金沢駅で買った加賀鳶でした・・・)が全量を買い取り守り続けた。その後、月日を経て再び長野県で広く栽培されるようになり、日の目をみるようになったのである。
境遇って重ねてしまうものがあります・・・
「氷室」での夏越し貯蔵・熟成・・・氷室での「ひやおろし」ってことですね。氷室って一回見てみたいですね。温度が一定で貯蔵に適しているのでしょう。廃線となったトンネルで貯蔵・熟成するところもありますもんね。生酛の酸味を保ちながらも、数ヶ月の熟成でそれは心地よい穏やかなものになっています。
口に含んだ瞬間、「旨い」・・・18度あるが、余りの旨さにグイグイと自らの食道に流し込んでしまう。「金紋錦」の特性なのか、協会9号酵母を使っているからなのか、旨味の中にも華やかさがある。
その時の自らの気分に、マッチする日本酒がある。日本酒はどんな時であっても自分に寄り添ってくれる相棒である。(主)