リウマチ医の悩み

  • 2023.03.05

 リウマチ医が日々の診療で頭を悩ます状況は多々ありますが、本日はその一つについてお話しましょう。

 リウマチ診療において大事なことは、医師と患者さんが同じ方向を向いているということです。これは、医師患者関係だけでなく、夫婦関係などでも同様でしょう。お互いに向いている方向が異なる場合、概して治療はうまくいきません。医師が「治療強化すべき」と判断していても、患者さんが「何で治療を強化しないといけないの?」と感じていれば、治療継続が困難だからです。

 関節に炎症が強いと痛みは強く、関節の炎症が弱いと痛みも軽いと一般的に思われがちです。たしかに、概ねそのような傾向がありますが、日常診療ではそうでないケースもしばしば経験します。

MTP関節(足の指の付け根)の関節エコー
これだけ炎症が強くても、痛みがあまりないのです。

 上の図のように、痛みは軽度だけれども炎症が強い場合、治療強化しなければなりません。放っておくと関節が徐々に壊れ、足の指の変形につながるからです。しかし、痛みが軽いが故に、患者さんに治療強化の必要性を十分理解してもらうには多大なエネルギーを要します。

 関節エコーは炎症が可視化できるため、その理解に一役買ってくれるものではありますが、「痛み」と「炎症」にギャップがある場合、医師と患者さんとの間の認識ギャップを埋めることは、決して容易ではありません。