アクテムラ・ケブザラ投与中、どのようにして関節リウマチを評価するのか?

  • 2023.06.18

 生物学的製剤(BIO:通称バイオ)は強力な抗リウマチ作用を有します。メトトレキサート(MTX)などの従来型合成抗リウマチ薬投与で効果不十分と判断された場合、その使用を考慮するものです。

 BIOには作用機序の異なる3系統(TNF阻害薬・IL-6阻害薬・T細胞選択的共刺激調節薬)の薬剤があり、後続品であるバイオシミラーを除くと、9つの先行品があるのですが、IL-6阻害薬には、アクテムラとケブザラの2つの薬剤があります。

 当ブログで、「CRPが正常であっても、関節リウマチ(RA)の状態は必ずしもよいとは限らない」と再三力説しておりますが、特にアクテムラやケブザラといったIL-6阻害薬投与中の方には、このことを十分理解してもらいたいのです。

 IL-6阻害薬を投与中は、その薬剤が効いていなくてもCRP値は0.1未満になります。IL-6阻害薬を投与中であるにも関わらずCRPが高ければ確実にその効果が十分でないと言えます(あくまで感染症など他のCRP上昇をきたす要因を併発していないことが条件ですが・・・)が、CRPが0.1未満であるからと言って、必ずしも効果ありとは言えません。ですから、IL-6阻害薬投与中の方は、CRP値でRAの状態を絶対に評価してはいけません。

 ではどのようにして評価すれば良いのでしょう?これまで私のブログを読んでくださっている方なら簡単に答えられますよね?RA診療の基本に立ち返ることです。RAは関節の滑膜に炎症をきたす疾患です。滑膜に炎症をきたせば、滑膜は肥厚します。滑膜が肥厚すれば、関節が腫れます。この腫れをしっかり捉えることが大事なのです。関節の腫れを捉えるためには、何といっても触診ですよね。

 つまり、IL-6阻害薬投与中の方が、日々の診療の中で触診をされていなければ、正しくRAを評価されていない可能性が高いということです。仮に、その評価が正しかったとしても、それは偶然でしかないわけです。診療というものが、そんな偶然で良いのでしょうか?

 触診で評価が難しい場合には、適宜関節エコーを用います。滑膜の炎症による滑膜の肥厚や血流シグナルの増加を視覚的に捉えることができ、治療効果判定にも使用できます。関節エコーはリウマチ医にとっての聴診器のような存在です。触診で評価したことをきちんとフィードバックしてくれるモダリティなのです。

 触診も関節エコーも共になされていないRA患者さんがいたとすれば、それは私から言わせると不幸でしかありません。正しい評価がなされていない可能性が高く、仮に正しい評価であったとしてもそれは「まぐれ」でしかないのですから。おまかせ医療の恐ろしさを皆さんしっかり理解しましょう。正しい知識を持って自分の病気と正しく向き合いましょう。