臨機応変
- 2025.09.17
「臨機応変に対応してください」この言葉は一見、現場判断を尊重したプラスの意味で使われる言葉のように思われるが、「明確な指示を出していない」ということの裏返しでもある。
指示者の仕事は「指示出し」であり、かつ幾通りにも解釈できるような「曖昧な」指示出しではなく、「一つの解釈しかない明確な」指示出しをすることである。そうでなければ、指示出しをしても期待されるものとは全く異なる結果が生じてしまう恐れがある。したがって、指示者が「臨機応変に対応してください」と言った場合には、自らの仕事を放棄しているものと心得るべきだと私は考える。
私が考える真の「臨機応変」とは、想定されるあらゆるシチュエーションに対して事前対策を幾通りもシミュレーションした上で、それらを尽くしてもなお「想定外」の事態が生じた場合に限り使用が許されるものである。
事前準備もろくにせず、都合よく使う言葉ではない。結果オーライというのは、「たまたま」その結果が得られただけのものであるので再現性が全くない。つまり、同じシチュエーションが再び訪れたとしても同じ結果が得られるとは限らない。また、指示者が現場任せの態度を取ってしまうと、責任の所在が曖昧なものとなる。マイナスの結果が生じた時に、責任の所在がはっきりしていないと、省みることができないため次に活かすことができない。つまり、組織として成長することができない。
「事前の一策は事後の百策に勝る」どれだけ事前準備ができたか?それが成功を掴むかどうかのカギである。私が毎朝6時からカルテ予習をしているのもそれを実践しているだけのことである。そして、一日一日の診療の中で、何十ともある指示出しの結果をスタッフと一緒に事細かく一つ一つ検証するのである。それを当たり前のようにできるヤツだけが成長できると信じて疑わない。
プロ野球でも、アウトカウントや埋まっている塁など、様々なシチュエーションを想定して体が覚えるまで同じ練習を繰り返す。強い組織づくりに「阿吽の呼吸」というものは要らない。