㊗ブログ300件目 「医師としての心構え」
- 2024.06.29
当院のブログが開設されたのは、開業2ヶ月後の2022.06.01でした。今回でブログが300件目に到達です。
最近ブログ更新が頻回になっているのは、ストレスを抱えながらも比較的体調が良い証です。心身ともに疲労困憊の状況では、書く気力が湧いてきませんし、アイデアも浮かんできませんからね。
さて、何を書こうかと考えましたが、本日思ったことをそのまま書こうと思います。
当院へは、福井県、岐阜県、京都府など、他府県からも関節リウマチ患者さんが来られます。遠方からわざわざ当院を選んで来院してくださることは、私にとってもスタッフにとっても非常に嬉しくありがたいことです。
一方で、患者さんの立場からすれば、そこには非常に切実な思いがあります。それは、現在診てもらっている医療機関では満足できない、納得できない、何かがあるからです。そしてそれは、現状より良くなる可能性があるのであれば、たとえ他県であっても医療機関を変えたいと一大決心させるほどの非常に大きなものだからです。
患者さんが我がクリニックに期待するものが大きい故に、私にはいつも以上のプレッシャーがかかります。
そのような時に私が心がけることとは何か?まず診療時間をしっかりと確保することです。他県から患者さんが来院される際には、予約枠を1時間確保します。患者さんの気持ちをしっかり受け止める「鶴翼の陣」を敷くためには、受け手側である自分に心のゆとりがなければいけません。診療時間に余裕がなければ、心に焦りが生じるため、患者さんの気持ちを十分に受け止めることができないからです。
患者さんとの話の中で、現状の何に満足されていないのかを探っていきます。その多くは、今の痛みが良くなる術はないのか?というものです。もちろん、医師との関係性もその中に含まれますが、痛みが十分コントロールされていれば、医師・患者関係が大きく崩れることはないわけですので、本質は「痛みが良くならない」というところに帰結します。
関節リウマチ診療において、痛みが良くならない原因には色々あります。しかし、他院から来院される場合、その多くは、医師が関節炎の状態を正しく評価できておらず、過小評価していることが原因です。
では、過小評価してしまう最も大きな原因は何なのか?それは、関節リウマチ診療の基本である触診を疎かにし、血液検査だけで評価してしまっているからです。
最も大切な基本手技である触診と関節エコーを組み合わせることにより、かなり正確に関節リウマチの状態を判断することができますが、残念ながらその重要性を理解している医師は、リウマチ専門医の中でも少数派で、多くの医師が無関心か軽んじているというのが実情です。患者さんが痛みを訴える関節に触診で腫れがないのかどうか、関節エコーで関節炎の所見がないのかどうか、そして痛みのない関節にも関節炎が隠れていないのかどうかを探っていきます。
決してこれらの診察は特別なものではありません。患者さんの不安や不満の根源を紐解いていくための基本的な作業です。しかし、基本的だからといって容易な作業というわけではありません。一流あるいは一流を目指す人は、決して基本的なことを疎かにしません。基本的なことを毎日大切に継続できる人にしか見えない世界があります。そして、それを実践した人にしか到達できない世界があります。
医師は職人です。優しくても、技術を伴っていなければ医師とは言えません。患者さんにその技術レベルが可視化されればよいのですが、医療法による広告規制もあり、患者さんからすればどの医師が本当に技術を持っているのか分からない現状があります。
他県から勇気を振り絞って来院してくださった患者さんに少しでも報いるためには、これからも基本的なことを毎日大切にすること、そして今まで通り始業前にその日一日の決意を新たにし、終業後にはその日一日を反省する。その繰り返ししかないのです。惰性で仕事をするような人間であってはいけません。一つ前のブログで書いたように、孤高の領域に達するには、孤独を誰かに理解されたいという甘い気持ちを捨て、愚直に前に進む強い心を持ち続ける必要があるのです。