自らの目で確かめよう 「有名」≠「実力あり」

  • 2024.07.28

 1990年代までの関節リウマチ(RA)治療薬に十分なものはなく、関節破壊進行を抑制することはほぼできなかった。その上、多くの患者さんがロキソニン®やグルココルチコイド(ステロイド)を連日内服し、消化性潰瘍や腎障害(ロキソニン®)、感染症・骨粗鬆症・糖尿病・高血圧など(グルココルチコイド)の副作用により、生命予後そのものが良好とは言えなかった。

 しかし、1999年に現在のアンカードラッグであるメトトレキサート(MTX)が保険適応となり、2003年に強力な関節破壊進行抑制効果を有する生物学的製剤(BIO)の1剤目としてレミケード®(インフリキシマブ)が登場すると、RA診療を取り巻く環境は劇的に変化した。

 その後、MTXは当初8mg/週が使用上限であったが、16mg/週まで使用可能となり、皮下注製剤であるメトジェクト®も使用可能となった。BIOは現在先行品として9製剤使用可能となり、BIOと同様に強力な関節破壊進行抑制効果を有するJAK阻害薬も登場、現在5製剤使用可能となった。

 日本リウマチ学会関節リウマチ診療ガイドライン 2024(改定) 薬物治療アルゴリズムにもあるように、ロキソニン®を含めたNSAID(いわゆる痛み止め)は、「疼痛緩和目的に必要最小量で短期間が望ましい」、グルココルチコイドは、「早期かつ従来型合成抗リウマチ薬使用RAに必要最小量を投与し、可能な限り短期間(数か月以内)で漸減中止する。再燃時などに使用する場合も同様である」と述べられており、これらはあくまで「補助的」治療の位置付けとなっている。

 2024.06.01ブログで「当院の関節リウマチ診療データ(2024年)」を載せたが、リウマチ専門医には、抗リウマチ薬をしっかり使いこなすことが求められる。

 さて、ここまでは序文である。本日のブログで言いたいことはここからである。

 リウマチ専門医というと、患者さん目線で言えば、「RA診療の質が保証された医師」と思われるかもしれない。しかし、実際のところは、リウマチ専門医でありながら旧態依然の治療(私から言わせれば『ガラパゴス治療』)しかできず、そして旧態依然の治療をしていることに気付いていないあるいはそれが悪いことだと思っていない医師が残念ながら少なからず(憚らず言えばたくさん)いる。

 この事実を知ると、読者のリウマチ患者さんは愕然とするかもしれない。しかし、これが現実である。

 この問題の本質はどこにあるのかというと、リウマチ専門医という資格は、一度専門医試験に合格してしまえば、その後単位取得による更新は必要であるものの、試験という篩にかけられることなく専門医を名乗り続けることができてしまうという点にある。

 前述のように、RA診療に大きな進歩がもたらされても、自らの知識を更新していないリウマチ専門医が少なからずいる。このような専門医に当たってしまうと、その恩恵に与れず不幸にも関節破壊が進行してしまうことになるのである。

 有名な医師が実力を持った医師とは限らない。リウマチ患者さんには、肥えた目を持ってほしい。患者さんには医師を選ぶ権利がある、一方で医師には患者さんを選ぶ権利はない。自らの人生を変えることができるのは、患者さん自身である。自らの人生を変えるのは、患者さん自身のちょとした勇気である。その勇気一つで、良い医師に巡り合える可能性がある。

 一方で私は、「今年最後のブログ」(2023.12.31)に『田舎でも都会と同じレベルのリウマチ診療を提供する』と書いたが、無名であってはならない、有名にならなければ社会を変えることはできないと改めて強く思うのである。