関節リウマチ診断の難しさ(その4)
- 2024.08.18
本日はこのシリーズの第4弾です。関節リウマチ(RA)の診断に血液検査は必ず必要ですが、血液検査だけでRAの診断ができるわけではありません。
今までの私の経験から言えば、リウマチ専門医でない医師のほとんどは、残念ながら血液検査だけでRAか否かを判断しています。その理由の大きなところは、医師国家試験にあるのではないかと思っています。本来、診断というものは、白・黒はっきりするケースは稀です。しかし、医師国家試験では典型的な例しか出題されないため、「この結果がこうであれば、こう判断する」という一対一対応になってしまうのです。
この検査をすれば、RAの場合100%高値(陽性)となるもの(感度100%)があれば、その結果が基準範囲内(陰性)の場合、RAを完全に否定することができます。
また、この検査をすれば、RA以外の疾患の場合100%正常範囲内(陰性)となるもの(特異度100%)があれば、その結果が高値(陽性)の場合、完全にRAと診断できます。
しかし、感度・特異度ともに100%の検査というものは存在しません。RA診断に利用されるリウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体の感度は約70%と言われています。したがって、これらが陰性であるからといってRAを否定することはできず、これらが陰性のRAは血清反応陰性関節リウマチと言われます。医師国家試験では、血清反応陰性関節リウマチは出題されません。
また、RFの特異度は低く、このシリーズの(その1)でも書いたように、様々な疾患や時に何ら疾患がなくとも陽性となるため、RF陽性をRA診断の根拠とする際にはかなり慎重な判断が必要です。一方、抗CCP抗体は特異度90%以上と言われており、それが陽性の場合にはRAの診断根拠としての重みはあるものの、やはり特異度100%ではないという点と、RA発症の10年以上前から陽性となることもあるため、抗CCP抗体陽性という結果だけでRAと診断することはできません。
このように、血液検査の限界というものを熟知しないと、正確な判断をすることはできません。RA診断の最初のステップは、関節痛があるかどうかではなく、関節痛の程度がどうかということでもなく、また血液検査結果がどうかということでもなく、「関節滑膜炎の存在を証明すること」です。
関節滑膜炎の存在を証明するためには、丁寧な関節触診が必須です。他院から当院へ移ってこられる患者さんのほとんどが、「今まで関節を触ってもらったことはほとんどありません」「こんな丁寧な触診をしてもらったことはありません」と仰います。それを私がどのように受け止めているかと言いますと、患者さんからそのような言葉をいただいて嬉しいというものではなく、日本のリウマチ診療の現実に対する憂いの気持ちと、それを自らの心を燃やすガソリンとして、「もっと自分が頑張らねば」と情熱に変換するのです。
「医師は職人である」・・・基本を疎かにせず、明日からの診療に邁進します。