「痛み止めによる悲劇」

  • 2024.12.14

 まずは皆さん、当院ブログの閲覧数 No.1 である「ロキソニンを毎日飲み続けている人へ(2023.05.14)」を読んでください。

 世の中には、いわゆる「痛み止め」というものが何種類かあります。その代表が、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID:エヌセイドと呼びます)です。

 「出されたから飲んでいただけです」(2024.10.22)でも書きましたが、日本リウマチ学会関節リウマチ診療ガイドライン2024改訂版では、NSAIDは「疼痛緩和目的に必要最小量で短期間が望ましい」と明記されています。

 それにも関わらず、他院から私のクリニックへ転院される患者さんの中には、数年間、中には20年以上(!!!)もの間、NSAIDを連日内服されている方がおられます。その共通する点は、「痛みはそれほどないけれども、主治医から処方されているから飲んでいます」です。

 先日来院された方の血液検査結果を確認してみると・・・腎機能(尿をつくる臓器である腎臓の働き)を反映する eGFR(イー・ジーエフアール)が数年で80台から50台に低下していました。腎機能が低下しても基本的に自覚症状は出ません。それは、医師が漫然と処方し続けたNSAIDが原因(もちろん他の要因も絡んでいる可能性はありますが、少なくとも主たる原因とは言えます)なのです。

 腎機能が低下すると、使用できないあるいは使用しにくい抗リウマチ薬があります。特に関節リウマチ(RA)診療におけるアンカードラッグであるメトトレキサート(MTX)が使用できるかできないかというのは、RAの疾患活動性をコントロールする上で、重要な問題になってきます。

 我々医師が薬を処方する際には、必ずリスク(副作用)とベネフィット(効果)を十分勘案します。それを怠った時に、あるいはそのリスクを過小評価した時に、不利益を被るのは患者さんです。

 RA診療において、NSAIDを漫然と処方している医師は、仮にリウマチ専門医の資格を持っていたとしても、良い医師ではありません。皆さん、ご自身が飲んでいる薬をすべて言えますか?今一度、お薬手帳を確認しましょう!!!