新聞紙に包装された日本酒
- 2025.01.26
突然ですが質問です。下の写真の日本酒が新聞紙に包装されている理由はなんでしょうか?

この日本酒は、4日前の1/22の朝に搾られた(上槽された)ものです。上槽後の「滓引き」「濾過」「火入れ」「割水」などの工程がなく、上槽と同時に瓶詰めされており「直汲み」と言われます。蔵元以外で購入できることはほとんどなく、日本酒愛好家からすると垂涎ものですね。
一方で劣化が早いため、光や温度など品質管理は厳重に、そして早めに飲むことが大事です。新聞紙に包装されているのは遮光を徹底するためなんですね。ちなみに、上槽日の1/22の朝刊で包装され、現アメリカ大統領の顔が正面になるように意図されている点が、非常にお洒落で面白い(こんな感覚は私だけでしょうか?)ですよね。
日本酒を購入する際に、一般の方が気にしない点を私は常に気にします。それは、お店の冷蔵庫の設定温度です。今回の日本酒のように火入れをしていない生酒では温度管理が重要です。本日購入したリカマン(リカーマウンテン)のお店では「0℃」となっていたので、「うんうん、しっかり管理されているなぁ」と思い即購入しました。時々、生酒を置いているのに設定温度が「8℃」であったり、まれに室温保存されているお店がありますが、コスト削減のために温度を上げているか、そもそも品質管理意識に乏しいのかのどちらかでしょう。そんな時には「残念やなぁ、買うのは火入れの酒にしよ」と心の中で思うのです。こういうところに、仕事に対するプロ意識が垣間見えるのです。
さて、外観はクリスタル・シルバー・グリーン(WSETではグリーン・レモンですかね)、香りはグレープフルーツ・洋ナシ・バナナ・メロン・スイカズラ・セルフィーユ・ヒノキ・白玉団子・石灰といったところでしょうか?

醸造アルコール添加(いわゆるアル添)・精米歩合70%(本来であれば本醸造を名乗れるはずですが、敢えてそのように記載をしていないのか、あるいは等外米を使用しているなどの理由のため名乗れないのかは不明です)のイメージからかけ離れ、米の香りは控えめで、生酒特有のフレッシュでジューシーな果物の香りが主体です。女性もきっと大好きなお酒だと思います。トランプ大統領の顔で包装された日本酒からは想像できない香りと味わいですが・・・
日本酒四合瓶の値段は、極端に精米歩合の低いものを除けば大体1500~1800円ですが、これは1155円!!!安すぎます。この値段からはやはり等外米を使用しているのかもしれませんが、それでも直汲みのお酒をこんな値段でいただけるのはありがたいことです。
新聞紙に包装された日本酒でしかも極端に安いものがお店に置いてあれば、それを手に取る人は少ないでしょう。しかし、物の価値というのは決して外観や値段で判断できるものではありません。どんな状況でも先入観を排することは大変難しいことですが、本質を見極める力が大事です。それは自ら意識して養っていくことでしか得られない能力です。
杜氏をはじめとした蔵人の「こんな人に飲んでほしいなぁ」という想いに、もし私がマッチしていればそれは私にとってこの上ない幸せです。それをお互いに確認する術がないからこそ、それは美しいものなのでしょう。