「つおい」

  • 2025.05.29

 経営者は野犬である。餌が与えられるわけでもなく、風雨を凌げる快適な環境が与えられるわけでもない。命の保証などどこにもない。常に戦闘態勢である。

 鳥山明氏の「ドラゴンボール」に登場する「孫悟空」は、「戦うことが好き」というサイヤ人としての本能により、強い相手と戦うことを生きがいとしている。

 また、同氏の「Dr. スランプ」に登場する「則巻アラレ(通称:アラレちゃん)」は、「つおい(強い)」者と戦うことが好きで、彼女を破壊しようとする Dr. マシリトとの戦いも、本人にとっては「遊び」という認識でいる。そして、「つおい」者が好きすぎて、相手の強さのほか、知らない言葉を聞いた際にもしばしば「〇〇ってつおい?」と尋ねてしまう。

 常に戦闘態勢でいることに疲れないか?疲れてしまったら、野犬には「死」が待っているのみである。孫悟空やアラレちゃんのように自らの境遇を自然と楽しめる経営者でなければ、経営者失格である。自らに降りかかる境遇はすべて御馳走だ。そう考えて、一日一日を本気で生きれば未来は自ずと開かれる。言い訳をする野犬などこの世に存在しない。

 自分より能力のある人間は、自分よりも何倍もの努力をしているから、在るべきポジションにいる。そんな人間を中学受験、そして中高の六年間から日常として目の当たりにしてきた自分にとって努力そのものに価値を見い出す意味はない。努力は当たり前のものであるから。

 一方で、決して自分と他人とを比較する必要はない。今日の自分より明日の自分が成長すれば良い。失敗したように見えてもさらなる未来の糧になればそれは失敗ではない。誤りがあってもそれを一日の終わりに正しく省みればそれは誤りではない。

 野犬は常に孤高に戦い続けるのである。「つおい」者と出会えることを楽しみにしながら・・・