良妻・賢妻たち
- 2022.08.27
大学の六年間、大阪の下町で過ごしたが、常にボケとツッコミを求められる日々であった。
ボケなければ、先輩から「お前オモンナイなぁ」と言われ、先輩がボケたのをツッコまなければ、「お前何ボーっとしとんねん」と言われ、一回生の自分は医学を学ぶために大学に入ったのに、まるでお笑い養成所に入れらたかのような感覚を持ったことを記憶している。
しかし、この六年間でそれなりに習得したボケとツッコミのスキルは、今から思えば、スタッフとのコミュニケーションにおいて非常に役立っていると感じる。ただ、私がボケても即座にツッコミが返ってくることはなく、また時に真顔で「それどういう意味ですか?」と聞かれ、ボケの解説を求められるという辱めを受けることもある。
こんな「伍人の嫁」だが、本来配偶者を「嫁」と呼ぶことは正式ではなく、「妻」と呼ぶべきである。私は「嫁」という言い方をしたことは未だかつてないが、音柱・宇随天元様の「三人の嫁」に因んでそのように名付けている。
タイトルに良妻・賢妻と付けたが、良妻・賢妻とは何なのか?五人のスタッフをみていて思うことは、常に周りの状況をみて、自分に何ができるかを考えながら仕事をしていることである。私のバックアップという意味合いだけでなく、クリニック全体の中で自分ができるサポートは何か?直接的であれ、間接的であれ、患者さんのために自分ができることは何か?私が何も言わずとも、五人が相談・協力しながら勝手に実践している。
クリニックのスタッフがコロコロ替わるというのは、私からすると全くあり得ない現象である。それは間違いなくリーダーの責任であるからである。リーダーがきちんと組織の方向性を示せず、思い付きでスタッフを振り回す状況や、最終的には自分が責任を取るという覚悟がなく、スタッフを本気で大事にする姿勢が見られない状況などが想像される。リーダーを家庭における夫に置き換えてみても分かるが、妻の心は確実に離れてしまうだろう。
スタッフを本気で大事にすることができれば、クリニックとしても必ず成長できると信じて疑わない。私が開業してからずっと、最も大事にしたいと思っていることはこういうことである。(主)