「足」の診察の重要性

  • 2023.05.08

 関節リウマチ(RA)は関節に炎症をきたす疾患ですが、すべての関節に一様に炎症が生じるわけではなく、症状が出やすい関節(=好発部位)があります。手の指や手関節がその代表ですが、足趾(=足の指)も好発部位の一つです。ACR/EULARのRA分類基準(2010年)においても、手指や手、足趾のように末梢の小関節ではスコアリングが高く、肘・肩・股関節などの中・大関節ではスコアリングが低くなっています。

 足趾が好発部位の一つであるということは、RA診療において「足」の診察が非常に大事ということになります。当院では、RA患者さんの診察の際には、手指・手・肘・肩・膝関節だけでなく、原則として足関節や足趾の触診も行っています。そして、適宜関節エコーを用いて、関節に炎症がないのかどうか正確に評価するよう努めています。

 しかし・・・「足」の診察はリウマチ専門医でも疎かになりがちです。その一番の理由は、「足」の診察のためには、靴下と靴を脱いでもらわないといけないという点にあります。その着脱にどうしても時間がかかるので、「足」の診察は敬遠されてしまうのです。

 また、「足」の症状は患者さん自身もあまり気付いていないことが多く、「何となく足の裏に違和感を感じる」「何となく足の小指の外側に違和感がある」「今までの靴が少しきつく感じる」ぐらいの感覚でしかなく、これらも医師から能動的に問診しないと聞きだせないことがほとんどです。つまり、患者さんは何となく「足」の違和感を感じてはいるものの、日常生活に大きな支障をきたすほどの痛みを感じるケースはほとんどなく、診察の際に自らそれを訴えることもほとんどないということです。

 患者さんが「足」の症状に気付かず、また症状を訴えることもなく、医師が「足」を診ることがなければ・・・足趾の関節に炎症があった場合、それは正しく評価されることなく、関節破壊が徐々に進行し、ひいては足の変形に繋がる恐れがあるということです。「炎症はCRPで判断できるでしょ?」という声が聞こえてきそうですが、今までも何度も力説している通り、CRPは足趾のような小さな関節に炎症があっても高くなることはありません。ですので、足趾の炎症の有無をCRPで判断することは絶対にできません。

 足の変形をきたしてしまった患者さんからは、「こんなに変形しちゃうと履きたい靴が履けなくて・・」という声をしばしば聞きます。RA患者さんの約8割は女性です。女性には男性と違って、靴の種類はたくさんあります。たくさんの治療選択肢がある現在、新規に関節リウマチを発症した方が足の変形をきたしてしまったとすれば、その主犯はその方を診ている医師にあると思っています。少なくとも私は自分にそう言い聞かせプレッシャーをかけながら日々の診察をしています。誰もが履きたい靴を履けるように・・・