メトトレキサート(MTX)の効果判定

  • 2023.05.09

 『関節リウマチにおけるメトトレキサート(MTX)使用と診療の手引き 2023年版』では、「予後不良因子をもつ非高齢者」では、MTX8mg/週での開始を推奨しており、2週ごとに2mgあるいは4週ごとに4mgずつ迅速に増量してもよい。また、副作用危険因子がなく、忍容性に問題がなければ、10~12mg/週まで増量する。と記載されています。

 私の場合、これに則った形で、70歳未満で腎機能に問題なく肺病変がないケースでは、MTX8mg/週で開始し、2週間後にはMTX12mg/週へ増量すると、2023.05.07のブログでも書きました。効果判定は、通常MTX開始3ヶ月後に行います。

 MTX4mg/週や6mg/週の低用量で開始され、その後増量されずに経過をみられているケースを時折散見しますが、MTX開始3ヶ月経った時点で効果不十分であった場合、それがMTXの用量が不足しているがためなのか、それともMTXを十分量投与しても効果が不十分なのか判断ができません。効果判定をクリアにするためにも、副作用危険因子がなく、忍容性に問題がなければ、早めにMTX10~12mg/週までしっかり増量することが肝要です。

 では、効果判定はどのように行うのでしょうか?患者さんからすれば、関節の痛みが改善しているかどうかが一番重要なポイントでしょう。確かに、関節痛の改善というのは効果判定の判断材料の一つですが、リウマチ医の立場からすると、あくまで判断材料の一つでしかありません。関節リウマチ(RA)の治療目標は、『関節破壊の進行を抑制すること』です。そのためには、関節の炎症がしっかり抑えられていなければなりません。関節の痛みが改善している場合、関節の炎症も抑えられていることは多いのですが、関節の痛みはほとんどないにも関わらず、関節には高度の炎症が残っている、つまり患者さんの自覚症状と、他覚所見が乖離することをしばしば経験します。

 ですので、リウマチ医はきちんと触診をして、治療開始前と比較して『関節の腫れ』が改善しているのかどうかを診る必要があります。また、関節エコーを適宜活用し、治療開始前後での滑膜の肥厚度の改善やパワードプラでの血流シグナルの改善を診ます。ちなみに、『きちんとしたリウマチ医』であれば、炎症反応であるCRP値をみなくてもRAの活動性をきちんと評価できます。今までもブログで何度も述べている通り、CRPは手指・手・足趾などの小さな関節に炎症があってもほとんど正常です。もし、あなたの主治医が普段の診療の中でCRP値しか説明しないのであれば、その医師は『きちんとしたリウマチ医』ではないのかもしれません。

 まとめです・・・『きちんとしたリウマチ医』は薬剤の効果判定を行う際、『関節の腫れ』が改善しているのか触診でしっかり確認します。そして、適宜関節エコーを活用し、滑膜肥厚の改善度やパワードプラでの血流シグナルの改善度を確認し、患者さんにもそれを視覚的に共有します。決してCRPだけでRAの状態を判断しません。