リウマチ性多発筋痛症

  • 2023.05.12

 一般的にリウマチというと『関節リウマチ(RA)』のことを指します。しかし、タイトルの『リウマチ性多発筋痛症(PMR)』と診断された患者さんの多くは、自分の病名がRAと思い込んでいます。シェーグレン症候群や全身性強皮症などの膠原病の方でも、RAと思い込んでいる方がおられるので、「私はリウマチなんです」との患者さんの訴えを、私はそのまま鵜呑みにしないようにしています。

 閑話休題・・・

 PMRは高齢者にみられ、急性の経過で(時に発症日が明確)、両肩の挙上が困難となり、時に腰部から大腿にかけての疼痛を伴い、布団からの起き上がりや椅子からの立ち上がりなどの日常生活動作が急激に困難となる疾患です。発熱を伴うこともあり、高齢者の不明熱の代表疾患でもあります。決して珍しい疾患ではなく、一般内科の開業医の先生方も診る機会があります。

 PMRという疾患は、それに特異的な症状や検査値異常がないため、その診断の際には同様の症状を呈する他の疾患をしっかり除外することが極めて重要です。しかし、その点を理解していない医師は比較的多く、PMR以外の疾患と誤診されているケースもしばしば遭遇します。

 感染症(感染性心内膜炎など)や悪性腫瘍(悪性リンパ腫など)など、鑑別すべき疾患は多岐に渡りますが、鑑別困難な疾患の一つに、『高齢発症関節リウマチ(EORA)』があります。EORAは、PMRと類似の発症形式や症状を呈し、比較的急な経過で、肩関節や股・膝関節などの大関節に炎症をきたし、発熱を認めることもしばしばあります。リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体も正常であることが比較的多く、発症時に厳密にPMRと鑑別することはしばしば困難です。

 一般の読者からすれば、「診断はクリアカットにできるものではないの?」と思われる方が多いかもしれませんが、実臨床はそんなに簡単のものではありません。感度・特異度ともに100%の検査が存在しないため、グレーゾーンが必ず存在します。一時には判断ができず、時間経過をみながら遅れて症状や所見が揃ってこないか見極めることが必要な場合もあります。真のリウマチ医は、常に思慮深さを持っており、患者さんにきちんと診断に至る思考回路を説明できます。皆さんももし自分の診断に疑問を持ったら、遠慮なく主治医の先生に聞いてみてください。