ロキソニンを毎日飲み続けている人へ
- 2023.05.14
ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)は、いわゆる『痛み止め』の代表で、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類されます。ロキソニン以外には、ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)やセレコックス(一般名:セレコキシブ)、ロルカム(一般名:ロルノキシカム)、モービック(一般名:メロキシカム)などもNSAIDsに含まれます。
関節リウマチ(RA)患者さんの中にはこのNSAIDsを内服されている方が多いかもしれませんが、RA診療におけるNSAIDsの位置づけを皆さん理解されているでしょうか?『関節リウマチ診療ガイドライン2020』の薬物治療アルゴリズムにおいて、NSAIDsは『補助的治療』の位置付けであり、『疼痛緩和目的に必要最小量で短期間が望ましい』との注釈がついています。これは、NSAIDsはRA診療の中心的役割を果たすものではなく、MTXや生物学的製剤などの抗リウマチ薬効果発現まで、あるいは一時的に関節炎が増悪した際のレスキューとして、痛みを和らげるために短期間で使用しましょうということです。
ここで、『短期間』となっているのは、言い換えれば数ヶ月以上におよぶようなNSAIDsの長期間投与は望ましくないということです。その理由は、その副作用にあります。代表的なものに、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍があります。「胃薬を飲んでいるから大丈夫」という声も聞こえてきそうですがこれは誤りです。胃薬を飲んでいても消化性潰瘍を完全に予防することはできません。特にNSAIDsに加えてステロイドを内服している方は、消化性潰瘍のリスクが高くなり、タケプロンなど胃酸分泌抑制薬を併用していても消化性潰瘍は生じます。私が病院勤務をしていた頃には、他院でNSAIDsを長期間投与された結果、消化性潰瘍で大量出血をきたし出血性ショックで救急搬送されるケースや、消化性潰瘍により穿孔(=胃や十二指腸に穴が開くこと)をきたし緊急手術となるケースに時々遭遇しました。
また、NSAIDsの長期間投与による『腎障害』の問題があります。尿を作る臓器である腎臓の働きが徐々に悪化してしまうのです。しかしながら、腎障害が生じてもそれが緩徐であれば自覚症状は皆無であり、患者さん本人が気づくことはありません。ふと気がづけば、腎機能を時系列で見てみると、2~3年前よりeGFRが低下しているということがあります。医師の中には腎機能に対する正しい評価ができていない者もおり、eGFR50台であってもNSAIDsを連日処方されてているケースがあります。
腎機能が低下するとRA診療にどのような影響が出るのでしょうか?最も大きな影響は、アンカードラッグであるメトトレキサート(MTX)を少量で慎重に投与せざるをえなかったり、場合によってはMTX投与そのものが出来なくなります。MTXだけでなく、他の従来型合成抗リウマチ薬も腎機能に影響を及ぼすものが多いため、治療選択肢が限られてしまいます。疾患活動性が高ければ、高価な生物学的製剤(BIO)を早めに導入せざるをえなくなり、患者さんの経済的負担が増えてしまいます。しかも、BIOの中には、TNF阻害薬のようにMTXと併用することにより十分なポテンシャルを発揮できる薬剤があるため、MTXを使用できないというのは色々な意味で痛手なのです。
NSAIDsを毎日飲み続けることは絶対にやめましょう!!!