大人のリンゴ病

  • 2023.05.22

 皆さん、リンゴ病って聞いたことありますよね?リンゴ病の正式な名称は、『伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)』です。ヒトパルボウイルスB19が原因ウイルスであり、子供の頬がその名の通り『リンゴ』のように赤くなるのが特徴です。

 あまり知られていませんが、伝染性紅斑は子供だけに見られるわけではなく、実は大人にも見られるんです。ヒトパルボウイルスB19が大人に初感染すると、子供のように頬が赤くなることはほとんどなく、急性の経過で多関節痛や手指・手の腫れ、発熱、皮疹(レース状の淡い紅斑)などが見られます。

 好発年齢は20~40代で、圧倒的に女性に多いのですが、リウマトイド因子や抗核抗体、抗DNA抗体が一過性に高値となることもあり、関節リウマチ(RF)や全身性エリテマトーデス(SLE)と間違われることもしばしばあります。

 今までもブログで書いてきましたが、診断というのは血液検査をすればすぐに分かるようなものではありません。感度・特異度ともに100%の検査というものは存在しないため、病歴や身体診察などを駆使しながら同様の症状や所見を呈する他の疾患を除外すること(=鑑別診断)が重要です。それは、RAの診断においても同様です。『真』のリウマチ専門医はそのことを十分理解しています。診察の際には、外堀を埋めるように関節以外の症状や所見にも留意しながら、本丸である関節を診ます。

 急性の多関節痛の患者さんを診た場合には、ウイルス性関節炎、特に『大人のリンゴ病』を必ず除外する必要があります。その際には、保育士さんなどの子供と接触する機会の多い職業かどうか?最近周りにリンゴ病と診断された児や頬が赤い児がいないかどうか問診します。『大人のリンゴ病』の診断のほとんどは、この問診で決着します。あとは、ヒトパルボウイルスB19 IgMを測定し確認するだけです。

 伝染性紅斑は飛沫感染のため、コロナ禍のマスク・手洗い・消毒環境下ではかなり少なかった印象ですが、これからはどうでしょうか?頭に想起していない診断は、診断に辿り着くことはありません。常に『鑑別診断』の大切さを心に留めていたいと思います。