リウマチクリニックを受診する契機として最も多い疾患は?
- 2023.07.19
私のクリニック『リウマチ科みやもと』は、関節リウマチ(RA)の専門クリニックであり、現在継続して通院されている患者さんの約75%がRAです。
しかし、初診で来院される患者さんの多くはRA以外の疾患です。では、その中で最も多い疾患は何だと思いますか?実は、『更年期障害に伴う関節症状』なのです。
『更年期障害』というと、のぼせ(hot flush)や動悸、発汗過多といったイメージが強いかもしれません。意外と知られていませんが、手のこわばりやあちこちの関節の痛みといった関節症状もしばしば伴います。50歳前後の女性で、このような症状を認めた場合には、『更年期障害に伴う関節症状』も鑑別する必要があります。
しかし、50歳前後の女性の関節症状を『更年期障害に伴う関節症状』と決めつけては絶対にいけません。特にRAの好発年齢と重なるため、RAの除外は必須です。では、どのように両者を鑑別すれば良いのでしょうか?
『更年期障害による関節症状』では、手指の腫れぼったさを訴えるケースは時にありますが、関節が腫れることはありません。一方、RAは関節の滑膜に炎症をきたしますので、滑膜が肥厚する結果関節が腫れます。ですので、最初のステップとしてやはり関節の触診が重要で、関節を一個一個触り、関節が腫れていないかどうかをチェックします。
次に、関節エコーで手指や手関節をチェックします。エコーでは滑膜の肥厚がないかどうかを可視化できるため、滑膜炎の有無を正確に評価できます。『更年期障害に伴う関節症状』では、滑膜の肥厚を認めることはありません。触診で関節の腫れがなく、関節エコーで滑膜の肥厚がなければ、RAの可能性はかなり低いと判断できます。
3つ目のステップが血液検査です。RAではリウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体が約7割で陽性となります。一方、『更年期障害に伴う関節症状』では通常これらは陰性です。しかし、RFは健常人でも一定の割合で高くなることがあるため、『更年期障害に伴う関節症状』でも偶発的に陽性となることがあります。一方、抗CCP抗体が『更年期障害に伴う関節症状』で陽性となることはまずありません。
場合によっては、レントゲン検査も検討することがありますが、概ねこの3つのステップで両者を鑑別することが可能です。結局は、リウマチ診療の基本が大事だということですね。