人手不足と言われる時代に

  • 2025.09.30

 「ただでさえ人手不足。厳しい職場だと思われるとスタッフを募集をしても誰も応募してくれないので、アットホームな職場をアピールしよう」

 恐らく多くの職場でしばしば交わされているであろうこの会話について、本日は考察してみたいと思う。

 今ここに100人の学生がいたとする。個々の能力を横軸(0-100)に、人数(0-100)を縦軸にグラフ化した時、多くの人は平均値・中央値・最頻値を50とした正規分布をとるとイメージするだろう。しかし、私のイメージは少し異なっている。その曲線の右側に僅かな隆起を持った二峰性のカーブであると考えるのである。

 時代を問わず、極めて優秀な人材(能力80-100)が存在すると信じている。「令和世代だから」とかいう「虚」の言葉を信じ込んでしまうと、そういった人材がいることにさえ気づかず、掴みそこなう恐れがある。

 最初の文章に戻ってみよう。この文章に沿った行動は、合格ラインを下げるということである。合格ラインを下げることで確かに合格者は増えるが、入社してくる人たちのレベル自体は間違いなく下がる。一方で、能力80-100の人たちからすれば、物足りなくそして魅力なく感じるために、これらの優秀な人たちを獲得することはできない。つまり、この行動は一見正解のように見えて、組織を弱体化させてしまう行動に他ならない。

 組織を本気で強くするためには、上位数%の人にとって魅力的な組織を作り上げることである。自らを磨き、他者との徹底的な差別化によりアイデンティティを確立することが極めて重要である。多くの人々が安心を抱く「普通」には何の価値もなく、間違いなく最初に淘汰されてしまうものである。

 このように話を進めると、「厳しい職場だと思われるとスタッフを募集をしても誰も応募してくれない」という言葉は、自らの魅力のなさを他責にして嘆いている非常に惨めでかつ情けない言葉であることに気付くのである。