経営者と監督、利益と勝利

  • 2025.10.27

 今日はお金の話をしよう。雇われている人は、毎月決まった額が自らの口座に入金される。仮に仕事をサボっていたとしても減額となるような例はほとんどないだろう。法律はなんと過保護なんだろうと思う。

 経営者にはお金の保障など何一つない。「クリニックの院長は儲かっている」という社会通念は私が最も忌み嫌うものであり、そのような目でしか見れない人を私は心の中で著しく軽蔑している。

 仮にあるサラリーマンの年収が500万円、私の年収(私は経営者でありクリニックのためのお金がほとんどを占めるためこの表現は正しくないが)が1000万円とする。このサラリーマンが「ほら儲かっているやん」と言ったとしてもそれは正しくない。なぜなら、そのサラリーマンが週40時間働いているとして、私は週80時間以上働いているから。単位時間当たりの金額は両者同じであるし、しかも私のお金は私が自由に使えるお金ではない。

 利益とは何となしに得られるものではない。経営者にとって「利益とは事前に設定するもの」だ。目標とする営業利益に固定費を足して、それを限界利益率で割れば、自動的に目標売上値が設定される。単なる算数である。

 もし目標売上値を達成したとしても、営業利益が目標値を下回った場合には、固定費が想定より高かったか、限界利益率が想定より低かったかのどちらか(あるいはその両者)ということになる。その場合の対処法は、固定費を下げるか、限界利益率を上げるか、目標売上値を上げるかのいずれかである。

 なお、売上値は単価×レセプト件数であり、売上を上げるには単価を上げるかレセプト件数を上げるか、もしくはその両者である。一方で、我々は保険診療を行う保険医であるので、単価を極端に上げることは、厚生局からの「個別指導」や「集団的個別指導」の対象となる。検査ごとに実施できる間隔(MMP-3やKL-6は3ヶ月以上あけて)が決まっており、それらを熟知した上で緻密な作戦が求められる。

 このように緻密に分解し分析し変化に順応していくために経営者は頭を使い、具体的にどう動くべきかを決断するのである。

 仕事しながら日本シリーズを少し観戦するのだが、指揮官である監督の指示がどのように選手に伝わっているのかを想像する。経営者にとっての利益を監督にとっての勝利と置き換え観るのである。経営者の頭の中は一般の人には理解できないことがお分かりであろう。