その症状は、本当に『風邪(かぜ)』ですか?
- 2023.05.16
突然ですが、皆さん『風邪(かぜ)』症状をきちんと説明できますか?日常診療をしていて気づくことですが、結構多くの患者さんが誤った理解をされています。空気の通り道である『気道』が感染源なので、咽頭痛(のどの痛み)・鼻汁(鼻水)・咳嗽(せき)・喀痰(たん)が主な症状であり、発熱や倦怠感を伴うこともあります。
咽頭痛・鼻汁・咳嗽・喀痰が全くなく、発熱や倦怠感だけの症状しかない場合には、決して『風邪(かぜ)』とは言いません。なぜこんなことを強調するかと言いますと、関節リウマチ(RA)の治療薬の多くは免疫抑制作用があるため、常に感染症に留意が必要です。その中では肺炎が最も頻度の高いものですが、それ以外にも蜂窩織炎、髄膜炎、副鼻腔炎、感染性心内膜炎、胆嚢炎、腸炎、腎盂腎炎など、全身の諸臓器が感染源となる可能性があります。感染症は早期発見が即ち重症化を防ぐことに繋がります。そのためには、患者さんが感染症のことをしっかり理解していなければいけません。
繰り返しになりますが、発熱しか症状がない場合、それを『風邪(かぜ)』とは言いません。RAの状態が落ち着いている患者さんが急に発熱をきたした場合、まず感染症を考える必要があるわけですが、リウマチ内科医は、感染源は一体どこなのか?という思考で、頭痛・嘔気・耳痛・鼻汁・咽頭痛・咳嗽・喀痰・胸痛・背部痛・腹痛・下痢・頻尿・排尿痛・残尿感・皮疹などの症状の有無を問診で確認し、感染源を探しに行きます。そして疑わしい感染源を狙って必要な検査(肺→胸部レントゲン、胆嚢→腹部エコー・CT、腎→尿検査など)を組んでいくのです。
感染症を完全に予防することはできません。大事なことは、患者さんが感染症にかかった時に正しい受診行動が取れるかどうかです。『真のリウマチ医』は関節だけしか診ないという診療スタンスは絶対にとりません。副作用や合併症が生じた時にそれを最小限にしようと、日々患者教育まで考えている医師こそが『真のリウマチ医』だと思います。そして、私はそのような医師であり続けたいと思っています。