関節リウマチ診療における『尿検査』の重要性

  • 2023.05.17

 関節リウマチ(RA)診療において、『尿検査』は重要な検査の一つです。内科の中で最も尿検査をオーダーするのは『腎臓内科』です。尿は腎臓で作られるので当然ですよね。その腎臓内科に次いで多いのが、我々『リウマチ・膠原病内科』でしょう。ブログでも何度も述べているように、RAや全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病では、全身の諸臓器に病変が出る可能性があるため、リウマチ医には全身を診る姿勢が求められます。腎臓もしばしば障害を受ける臓器であり、尿検査が重要というわけです。

 では、具体的に尿検査で何をみているのでしょうか?ここではRAの場合に限って述べます。RAにおいてみられる腎障害には大きく三つの原因があります。一つは薬剤性、二つ目がアミロイドーシス、三つ目がRAとは関連のない病態の合併です。

 まずは薬剤性ですが、抗リウマチ薬の一つにブシラミン(先発品:リマチル)というものがあります。ブシラミンでは、ネフローゼ症候群という大量のタンパクが尿中に漏れ出てしまう病態をきたすことがあるため、尿検査が必須です。個人的には、ブシラミンを新規に処方することは最近ほとんどなくなっていますが、本邦では古くから使用されている薬剤のため、一般内科でも処方されることがあります。処方医がブシラミンの副作用を知らなければ、タンパク尿が見逃されてしまい、下肢の浮腫や体重増加をきたした時点でやっと気づくというような状況が生じえます。

 次にアミロイドーシスです。アミロイドーシスは、アミロイドというタンパク質が全身の色々な臓器に沈着し、その結果種々の臓器障害をきたす病態です。RAの疾患活動性が十分抑えられていない状態が長年持続した場合に見られるため、生物学的製剤やJAK阻害薬が登場してからは日常診療で診る機会は減っていますが、リウマチ医はしっかり知識を有しておく必要があります。腎臓にアミロイドが沈着すると、タンパク尿や血尿などの所見が見られるため、早期発見のためにはやはり尿検査が必須です。

 三つ目ですが、IgA腎症や泌尿器科疾患などをたまたま合併するということがあります。

 尿検査は侵襲性のない検査です。尿は腎臓の状態を映す鏡であると同時に、尿検査を契機に腎疾患や泌尿器科疾患だけでなく全身性の疾患が見つかることもあります。決して尿検査を侮ってはいけません。大事な検査ですので定期的に受けるようにしましょうね。