指先から数えての第1関節が腫れたら、へバーデン結節(変形性関節症)だけでなく、『乾癬性関節炎』も想起を!

  • 2023.06.04

 手指は関節リウマチ(RA)の好発部位です。「手指のこわばりでしっかり握りこむことができない」「手指の節が痛い・腫れる」といった症状が、RAの主訴として最も多いものです。

 中手指節関節MCP関節:指の付け根の関節)や近位指節間関節PIP関節:指先から数えての第2関節)が好発部位であり、遠位指節間関節DIP関節:指先から数えての第1関節)は稀とされています。RAでもDIP関節に痛みや腫れが全く出ないわけではありませんが、DIP関節だけでなくMCP関節やPIP関節にも痛みや腫れがあるというのがその診断には重要です。

 DIP関節に痛みや腫れがある場合、そのほとんどは変形性関節症です。DIP関節に生じる変形性関節症を『へバーデン結節』と呼びます。しかし、時にその他の疾患が隠れていることがあります。それが、『乾癬(かんせん)性関節炎:PsA』なのです。RAとの鑑別が時に難しく、内科系のリウマチ専門医であれば必ず知っている疾患なのですが、整形外科の先生方には意外と知られていません。

 RAの抗CCP抗体のように、PsAに特異的な血液検査マーカーはありません。ですので、血液検査をしてこのPsAという診断に辿り着くことはありません。つまり、患者さんがPsAを知らない医師に受診した場合、ほぼ確実に「原因不明」と言われます。

 頭に想起していても、症状や所見が軽微や非典型的なために診断に辿り着かないということはありますが、頭に想起していない疾患は、診断に辿り着くことはできないのです。辿り着けたとすればそれは「偶然」です。我々リウマチ専門医は、常に鑑別診断をいくつも想起しながら、問診・身体診察を行うのです。

 すでに皮膚科で尋常性乾癬と診断されている方が関節症状を訴えて来院された場合、PsAの診断は比較的容易です。皮膚症状が軽微で皮膚科でも尋常性乾癬と診断されていない場合や皮膚症状がない場合には、リウマチ専門医としての診断能力が問われます。乾癬の家族歴や爪甲変化・指趾炎(指全体がソーセージ様)、炎症性腰痛(安静により増悪し時に腰痛で夜間目が覚める、軽労作で軽減する腰痛)、踵の痛み(アキレス腱炎・足底腱膜炎)などを確認します。ここに列挙したものを見てもお分かりの通り、血液検査は含まれていません。問診と身体診察、適宜エコー検査での付着部炎の確認が重要です。

 乾癬性関節炎(PsA)の診断は、それを知っている医師でしか診断できません。またその治療も、RAと共通する部分(メトトレキサート、TNF阻害薬など)とそうでない部分(IL-17阻害薬・IL-23阻害薬など)があります。DIP関節痛だけでなく、他の痛みや皮膚症状がある人は、必ずリウマチ専門医を受診しましょう。