あなたの主治医は「関節」しか診ない人ですか?
- 2024.09.06
関節リウマチ(RA)という疾患は、関節内の滑膜に炎症(関節内滑膜炎)をきたす疾患です。したがって、「関節」をしっかり診ることが重要です。心臓や肝臓は1つ、肺や腎臓は2つしかありませんが、「関節」は非常にたくさんあるわけですので、1ヶ所や2ヶ所だけ診ればよいというものではありません。日常診療では40以上もの関節を一つずつ触診し、適宜関節エコーをあてるという作業を限られた診察時間の中でスピーディーに行う必要があります。
最近のブログ記事には、「関節」を診ることの重要性について繰り返し述べてきました。関節内滑膜炎はCRPや赤沈などの炎症反応やMMP-3の値だけで判断するものでありません。そして、リウマトイド因子(RF)の値で判断するものではありません。関節をしっかり触診し、関節内滑膜炎の傍証としての関節腫脹の有無を確認すること、そして、触診だけでは判断が困難な場合には適宜関節エコーを使用すること、これが基本です。
さて、本日は、RA診療において「関節」だけを診ていればよいものではないことを強調したいと思います。ここでは、一例を提示しましょう。架空症例です。
あなたは、RAの治療薬としてメトトレキサート(MTX)を使用しています。RAは臨床的寛解を維持していました。数日前から連日38℃の発熱が出現。しかし、のどの痛み咳や腹痛などの局所症状は明らかでありません。近くの内科開業医を受診すると、「コロナは陰性ですね。特殊な薬を飲まれていますので、念のためにリウマチの主治医の先生にも熱が出たことは伝えておいてください」と言われたため、リウマチの主治医に連絡したところ、「熱はリウマチと関係ないので内科できちんと診てもらうように」と言われてしまいました。・・・このような経験はおありですか?
RA患者さんの多くはMTXのように免疫抑制薬を使用されています。よって、RA患者さんに発熱を認めた場合には、まず感染症の除外が重要です。感染源の特定のためには、発熱以外の咳や腹痛、皮膚の発赤などの局所症状を確認することが大切です。局所症状が明確でなくとも、肺炎や胆嚢炎などを生じることがあるため、感染源の特定は容易でないこともあります。
もし、感染症が否定的であるならば、MTX関連リンパ増殖性疾患などのように特殊な病態の可能性についても念頭におく必要性が出てきます。
このように、RA診療において不測の事態が生じた際には、内科的知識を駆使して、患者さんをきちんと正しい方向に導いてあげることが重要です。仮に自分一人で解決できないことであったとしても、道標として正しく誘導してあげることが主治医としての務めであると思います。
あなたを診てくれている医師は、本当に主治医ですか?「主治医」という意味を患者さん自身であるあなたがじっくり考えてみてください。