人の心に潜む「偏見」
- 2024.10.20
昨日のブログでは「特定名称酒」の話題を出しました。8種の名称は、普段日本酒を飲む方ならもちろん、飲まない方も一度は聞いたことのあるものでしょう。
これらは、「醸造アルコール添加のないもの」つまり「純米系(純米大吟醸・純米吟醸・特別純米・純米)」と「醸造アルコール添加のあるもの」いわゆる「アル添(大吟醸・吟醸・特別本醸造・本醸造)」の大きく2系統に分かれます。
日本酒に対するよくある誤解の一つに、「アル添は体に良くない、品質が良くない」というものがあります。「アル添」の目的は、時代背景と共に変遷してきました。温度管理が困難であった江戸時代には「腐造」目的、物資の乏しい戦後には「三倍増醸酒(三増酒)」という「コスト軽減」が目的であり、これらがそのイメージを悪くしてしまっている根源と考えられます。
しかし、現在では「味わいの軽快化」や「吟醸香を引き出す」ことが目的であり、全国新酒鑑評会の出品酒のほとんどは「アル添」です。
偏見は視野狭窄を起こします。私はネットに書いてある口コミや評価の点数を自らの判断の頼りにすることはほぼありません。それは組織のトップである以上、その判断はすべて自らの責任だからです。判断根拠となるものを自らの目で確かめないと判断そのものを誤ります。
さて、昨日のお酒のテイスティングコメントですが、SAKE DIPLOMA 試験方式で言いますと、外観は透明感があり、淡い~やや淡いクリスタル・グリーン・イエロー。香りは華やか・ふくよかが主ですが、熟成による芳醇さもあります。洋ナシや酢酸イソアミルによるバナナ・メロンといった濃厚な果実が華やかさを構成しており、メロンはプリンスメロンではなく「完熟の夕張メロン」のようなジューシーな重さを感じます。セルフィーユだけでなく、熟成に伴う月桂樹の葉の印象、そしてヒノキ、炊いた米、つきたての餅、一部クリームチーズのような要素もあります。
これらのコメントはもちろん正しいわけではありませんし、その時の体調やシチュエーションによっても感じ方というものは違うでしょう。しかし、私は「表現すること」が大事だと思っています。人はよく、「口には出さないけれど、いつも思っています」みたいなことを言います。私はそのコメントは意味がないと思います。気持ちは相手に伝わらないと意味がない、伝えようとしていないものを相手に理解を求めることは間違いです。
テイスティングは、人としての感性を磨くのに良いトレーニングになると思っています。感受性豊かであることを多くの人は神経質と呼びます。しかし、私はそれは他人に感じ取れないものを感じ取る特殊能力であると思っています。