「出されたから飲んでいただけです」

  • 2024.10.22

 久しぶりに関節リウマチ(RA)に関するお話をしましょう。

 突然ですが、このブログを読んでくださっているRA患者さんの皆さん、内服している薬の名前とその目的をはっきり言うことができますか?おそらく、ほとんどの方が正確に答えられないでしょう。

 RA患者さんでは、処方される薬剤の数が比較的多くなる傾向があります。アンカードラッグであるメトトレキサート(MTX)を中心に、イグラチモドなどのその他の従来型合成抗リウマチ薬や生物学的製剤・JAK阻害薬を併用するだけでなく、時に痛み止め(NSAIDs)やグルココルチコイド(ステロイド)、そして骨粗鬆症などの合併があれば活性型ビタミンD製剤をベースにビスフォスフォネート製剤などを処方されることが多いでしょう。私はできるだけ処方内容をシンプルにするように努めておりますが、それでも時に処方が7剤や8剤となることがあります。

 先日、他院から私のクリニックへ転院されてきたRA患者さんのお話です。お薬手帳を拝見すると、何年にも渡り痛み止め(NSAIDs)が連日処方されていました。

 患者さんに「痛みが強い部位はありますか?」と伺いしましたが、「特に痛むことはないです」との返事で、「じゃあ、なぜ痛み止めを毎日飲んでいるのですか?」と聞いてみました。

 「出されているから飲んでいるだけです」

 これが今回のお話のタイトルです。

 誤解のないようにお伝えしますが、処方の責任は医師にあります。薬を処方できるのは医師だけです。医師は処方する際には常にその必要性をリスク・ベネフィットバランスを勘案して判断しなければなりません。

 話は少し逸れますが、患者さんの中には薬を希望すれば医師が処方してくれると勘違いされている方がおられます。特に湿布においてその傾向が強いように思いますが、あくまで処方するかどうかは医師の判断です。湿布もベタベタ連日貼ることで、胃潰瘍・十二指腸潰瘍から大量出血を生じ、出血性ショックで救急搬送されるケースもあります。閑話休題

 診療時間の限られた外来では、医師は「Do処方(ドゥー処方)」になりがちです。「Do処方」とは、今まで処方された内容をそのまま踏襲して処方し続けることです。しかし、本来必要のない薬剤が漫然と処方され続け、ポリファーマシーによる弊害の元となりえます。

 日本リウマチ学会関節リウマチ診療ガイドライン2024には、痛み止め(NSAIDs)は「疼痛緩和目的に必要最小量で短期間が望ましい」と明記されています。今までのブログでも何度も書いてきたこと(当院ブログの閲覧数ナンバーワンであるロキソニンを毎日飲み続けている人へ(2023.05.14)を参照ください)ですが、先述の消化性潰瘍だけでなく腎障害のリスクとなるため、連用は避けるべきです。

 医師である我々は、今回の患者さんの言葉の重さを十分認識しなければなりません。そして、患者さんも医師任せにするのではなく、自分自身の病気としっかり向き合う姿勢を持つことが重要だと思います。