触診の大切さ
- 2024.12.11
関節リウマチ診療において、いかに触診が重要な診察であるかを今まで何度もブログで述べてきました。
「触診なくしてリウマチ診療なし」
今回は先日の診察でのお話をしましょう。
当院ではすべての患者さんに、受付時に体温を測定してもらっています。その方は38.0℃でした。熱がある場合には、受付スタッフがそれを私に報告し、私はどのような形で診療をするのかを指示します。ご本人は全く発熱の自覚はなく、発熱以外の症状も全くないとのことでした。
関節リウマチ(RA)患者さんに発熱を認めた場合、まず感染症を考慮する必要があります。感染症でも発熱以外の咳嗽(「がいそう」と読みます。「せき」です)や腹痛などの局所症状がはっきりしないことがあります。高齢者では細菌性肺炎を起こしても咳嗽がほとんどなく食欲低下や倦怠感のみのことがあります。また、急性胆嚢(たんのう)炎や急性腎盂(じんう)腎炎でも、腹痛や膀胱刺激症状(頻尿・排尿時痛・残尿感)が見られないことがあります。
発熱があるのに局所症状がない場合でも、その原因が感染症の場合には倦怠感(だるさ)を伴うことが多いのですが、倦怠感もなく意外と「ケロッと」されている場合、「ひょっとして原因は感染症ではないのかもしれない」と思うことが大事です。もちろん、感染症であっても倦怠感を必ず伴うわけではないので、感染症の除外が重要であることは言うまでもないことですが・・・
さて、その患者さんの話に戻りますが、「どこか痛いところはありますか?」と聞いても「別にありません」との返事でした。
触診は患者さんが痛いと訴える関節だけでなく、痛みのない関節もしっかり触診することが大事です。私の場合、日常診療では原則40関節(場合によっては28関節のみ)の触診を行います。
手指(20関節)・手(2関節)・肘(2関節)・肩(2関節)と触診を進めていくと・・・
「ん?」
膝の左右を比較すると、明らかに右が腫れている。関節を押さえると、「少し痛みます」
これは右膝に関節炎があるなと確信し、関節エコーを当てると、膝蓋上嚢に中等量の滑液貯留と、内側・外側関節裂隙にパワードプラにて中等度の血流シグナル増加を伴う中等度の滑膜肥厚を認めました。
「右膝に関節炎がありますね。これが発熱の原因だと思います」
触診を怠っていれば、その原因は判明しなかったことでしょう。まあ、関節炎があったとしても、それが必ずしもRAに因るものとは限らず、これもまた感染症の除外が必要なのですが、その方はRAによる関節炎が増悪したと判断し、治療強化を提案しました。
このように、RA診療において触診というのは絶対に怠ってはいけない診察です。このブログを読んでくださっている患者さんの中で、触診されていない方がおられれば、リウマチ専門医(専門医でも触診をしていない医師も一部おりますが・・・)の立場からすると「不幸」だと思います。何度も言いますが、
触診なくしてリウマチ診療なし