「早指し」

  • 2024.12.26

 私は久しく将棋をしていない。日曜日の昼前にNHKの将棋講座を時々みるぐらいである。

 将棋には持ち時間があるが、持ち時間を使い果たすと、1分や30秒以内に次の手を指す必要がある。終盤に熟考する余裕もなく指した手が、とんでもない悪手であったり、予想だにしない大逆転を生んだりする。最近の将棋番組では、AIが優勢度をパーセントで表示してくれるため、それが「ギュイーン」と大きく動く時には鳥肌が立つ。

 経営者に与えられた特権は「決断」である。それは日々の小さな決断から、クリニックの命運を左右する大きな決断まである。目まぐるしく大きく変わる状況とそして限られた情報の中で、次々と指していかなければならない。そして、指し手により生じた結果に対して、また次の手を指さなければならない。指し手に迷うようであれば、それは組織の死を意味する。

 とてつもない緊張感の中で、その特権を与えられた自分を楽しめない人間に経営者は務まらない。自らの努力に価値を見出す者は真の経営者ではない。結果至上主義でなければならない。