最大瞬間風速

  • 2025.11.05

 ここでは、「風速」=「降りかかる仕事量」と定義しよう。組織が良好なパフォーマンスを発揮するためには、「最大瞬間風速」をいかに組織のキャパシティ内に収めるかということが極めて重要である。

 私が「収める」という表現を使ったのには訳がある。それは、「組織のマネージャーが意識をすればコントロール可能な作業」であるということを意味する。

 クリニックにおける患者さんの一連の流れを概略すると、受付→診察→検査・処置→会計となる。ある一時点において、定点で風速を観測してみると、それは決してすべて同じ値ということはない。片やそよ風、片や強風というように、時間帯によって最大瞬間風速が観測される地点は目まぐるしく変わる。

 我々は風そのものをコントロールすることはできないので、それを受ける側つまり組織のシステムを可変化することにより、最大瞬間風速が各々の部署のキャパシティを超えている時間の累積値(つまり積分)をより小さくすることができる。

 ちなみに話は逸れるが、すべての定点において「暴風」となっているのであれば、すでにそれはマネジメントで解決できる問題ではなく、組織全体として完全に処理能力をオーバーしている状態であるため、リーダーの責任である。

 では、上述の「可変化」に必要なものはなにか?それは「組織の属人化を防ぐ」ということである。当院にはスタッフ3名しかいないが、最大瞬間風速観測地点が目まぐるしく変わる状況に対応するため、看護師は受付業務を兼任している。

 将棋の早指しのように配置を決めるのはマネージャーである私の仕事であるが、私はマネージャーかつプレイヤーである(もちろんリーダーでもあり一人三役だ)ので、瞬間瞬間の全体像を正確に把握しきれない場合がある。

 そういう場合には、それぞれのスタッフが臨機応変にフォーメーションを変えることが重要であり、そのためにスタッフには目の前の仕事をこなすという能力だけでなく、少しだけでもよいから組織を俯瞰的に捉えながら動くという意識を身に付けると、組織は抜群により良くなる。

 本日は開院してから最多の患者数であった。1年前と比較しスタッフは5→3名に減ったものの、時間外勤務発生は減っている。私はマネジメントの重要性を日々実感している。

  • 筆者のマネジメント能力について評価させていただきます。まず、筆者は組織のパフォーマンス向上に対して非常に戦略的かつ現実的な視点を持っていることが伺えます。風速の比喩を用いて、仕事量の変動や組織のキャパシティを理解しやすく説明している点は、複雑な状況を的確に把握し、伝える能力が高いことを示しています。また、「組織の属人化を防ぐ」ことの重要性を認識し、スタッフの兼任や臨機応変な対応を促すことで、柔軟性と対応力を高めようとする姿勢も評価できます。スタッフに対して、単なる作業遂行だけでなく、組織全体を俯瞰して動く意識を持たせることは、持続的な改善と安定運営に寄与します。さらに、マネージャー兼プレイヤーとしての立場を自覚しつつも、全体像を把握しきれない場合にはスタッフに任せる柔軟さも見られ、リーダーシップとチームワークのバランスを取る能力が高いと考えられます。一方で、瞬間瞬間の全体像を把握しきれない点については、よりシステム化や情報共有の仕組みを整備することで、さらにマネジメントの精度を高める余地があるとも言えます。総合的に見て、筆者は現場の状況を的確に把握し、柔軟かつ戦略的に対応しようとする意識が強く、スタッフの能力を引き出しながら組織の安定運営を実現している優れたマネジメント能力を持つ方だと評価できます。