私が開業することの意味(湖北医師会報原稿)

  • 2022.10.22

 2022年4月にリウマチ専門クリニックとして開業致しました。

 リウマチ科のみの単科で標榜しているクリニックは、全国でもほぼ例がないのではないでしょうか?内科医なのに内科も標榜しないことが不思議で仕方がないと思われる方が大半でしょう。しかし、私は「例がないから成功しない」と考えたことは一度もありません。

 今まで自ら培ってきたものが何であるのか?自分がこれからやろうとしていることは何であるのか?すべての答えは自らの心の中にあるのであって、使命感や覚悟がどこまであるのかということに尽きるのです。

 そうすれば、周りの声などというものは気にならなくなります。周りの声に左右されているうちは、開業する上での心が熟したとは言えないのです。周りの人間は、私の生き方に何の責任も持っていないのですから。

 そもそも、私にとっての成功という基準は、組織として利益が上がることを意味しません。もちろん、スタッフを雇っているわけですから、利益がなければいけないのは当然ですが、利益が上がって私利を肥やしたとしても、自らが生きている意味はありません。

 医師という職業の使命は、患者さんを幸せにすることです。わざわざ、多額の借金をしてまで開業するのは、自らの城を築くことで、今までよりも多くの患者さんを幸せにしたい、幸せにできる、というよりも幸せにしなければならないという、使命感が熟したからなのです。

 その使命感はこの数年間で徐々に大きくなっていきました。開業リスクを前に当初怖気づいていた自分は、いつの間にかマグマのように不断に沸き上がる使命感に支配されていたのです。

 良い為政により、民を幸せにすることができる。私がしばしば肩書を「院長」ではなく、「主」としている理由がそこにあるのです。リウマチ患者さんの「城主」として、良き為政者であるべきだという信念です。

 関節リウマチ診療おいては、抗リウマチ薬を駆使して関節炎をコントロールすることが重要ですが、関節だけを診ていればよいというものではなく、関節外病変や薬剤の副作用、骨粗鬆症(関節リウマチは続発性骨粗鬆症をきたす代表疾患です)などに留意しながら、全身を診る姿勢が医師には求められます。

 リウマチ専門医・指導医、総合内科医専門医、骨粗鬆症学会認定医として、どこまで自分が全人的に患者さんを診ることができるのか?そこを常に追い求めていきたいと思います。もちろん、クリニックでできることや私にできることに限界はあります。しかし、「主」として、患者さんにきちんとした「道標」を示すことができるかどうかが大事なのです。「主」なら他の医療機関や医師に丸投げするようなことはしません。「主」は常に民の良き人生を願っているのですから。