関節リウマチ診療に携わる医師としての心得とは?
- 2023.09.29
関節リウマチ(RA)診療に携わる医師が、日常診療で常に心に留めておかなければならないこととは何でしょうか?
その答えは医師によって様々でしょうが、しっかりと自らの考えを述べることができる医師は、きっと素晴らしいリウマチ医でしょう。逆に、曖昧な答えしかできない医師であれば、ポリシーのないリウマチ医なのかもしれません。
RAは単に関節が痛む疾患ではなく、『関節破壊が進行する疾患』です。リウマチ医は、関節炎の状態を正確に把握し、抗リウマチ薬を駆使して関節破壊の進行を抑える努力をしなければなりません。メトトレキサート(MTX)を使用できるのかどうか?使用できるならどれぐらいの量を投与するのか?もしMTXで効果不十分ならどの生物学的製剤(BIO)やJAK阻害薬を選択するのか?もしそれらが効かなければ、次にどの薬剤に変更するのか?・・・・・リウマチ医は抗リウマチ薬を熟知していなければ、患者さんを良い方向に導くことはできません。
また、抗リウマチ薬の使用においては、有効性の面だけをみていれば良いというものではなく、副作用にも注意が必要です。多くの抗リウマチ薬は免疫抑制薬ですので、特に感染症に留意が必要です。コロナやインフルエンザだけでなく、ニューモシスチス肺炎のように真菌(カビ)による感染症が生じることもあります。
アンカードラッグの位置付けであるMTXには、重篤な血球減少や間質性肺炎、リンパ増殖性疾患、肝障害などの副作用があります。リンパ増殖性疾患では、リンパ節だけでなく、肺・口腔内・皮膚などの様々な臓器に病変が出現する可能性があります。
また、RAは関節だけが障害される疾患ではなく、種々の臓器に病変が生じることがあります。その代表は間質性肺疾患(ILD)です。ILDがあれば、その程度によっては抗リウマチ薬の使用が限定されることがあります。また、RAでは骨粗鬆症の合併が多く、骨粗鬆症治療にも精通する必要があります。
ここまで読み進めてくださった方は、なぜ私がこのように難しいことを書き並べるのだろう?と思われるでしょう。
リウマチ診療には、全身を診る・全人的に患者さんを診る姿勢が重要である
これが私の冒頭の問いに対する答えです。RAをやっつけようとする攻撃面と、RAによる合併症や薬剤の副作用を見張る防御面、その両者をバランスよく有することが大事だと思います。リウマチ専門医と総合内科専門医のハーモニーが求められる領域が、関節リウマチ診療だと思いますし、私の仕事のやりがいなのだと思います。