「関節リウマチもどき」の痛風

  • 2025.01.30

 痛風という言葉を聞いたことのない人はまずいないでしょう。尿酸の値が高い状態が持続すると、尿酸ナトリウム結晶が関節内に沈着し、痛風発作と言われる関節炎発作を誘発します。典型的な罹患部位は母趾MTP関節(足の親指の付け根)であり、発赤を伴う腫脹・激痛が生じます。

 「痛風の診断なんて簡単」と思われがちですが、実は結構難しいのです。足関節やアキレス腱などにも炎症をきたすことがありますし、関節炎発作を繰り返しているうちに、手指・手・肘・肩関節などにも関節炎が生じ、かつ持続性となり、レントゲンでも骨びらんを認めると、関節リウマチと誤診してしまう恐れがあります。

 その診断において重要な点がいくつかあります。

 一つ目は、尿酸が高いというエピソードの有無です。健診等で高尿酸血症を指摘されたことがないかどうかを確認します。よくある間違いですが、痛風発作時には尿酸値が正常もしくは低値をきたすことがあるため、関節炎発症時の尿酸値が高くないからといって痛風を否定することはできません。

 二つ目は、関節炎発作を繰り返しているエピソードがあるかどうかです。そのようなエピソードがあれば痛風を支持する根拠の一つになるでしょう。ただし、関節リウマチでも回帰性リウマチとして関節炎発作を繰り返し、その後関節炎が持続性となるような発症様式をきたすことがあり、関節炎発作を繰り返しているだけではやはり痛風とは言えません。

 三つ目は、「痛風結節」を探すことです。痛風発作を繰り返しているケースでは、手指関節の伸側や肘関節の伸側などに結節を認めることがあります。そして可能なら穿刺吸引してみましょう。「白色チョーク状」の内容物を認めるはずです。現在は尿酸ナトリウム結晶の有無を保険診療で調べることができます。

 四つ目は、関節エコーです。関節内では硝子軟骨の表面に高輝度の尿酸ナトリウム結晶を認めます(DC sign)、また関節内や腱内にも高輝度を呈する点状や線状の構造物を観察することができます。

 これらを組み合わせることで、痛風関節炎の診断にせまることができます。問診・身体診察・エコー、これらは侵襲性のないものです。侵襲性なく診断にせまるのは内科診断学の真髄と言えるでしょう。痛風といえば皆さん整形外科と思われるでしょうが、内科医も活躍できるのですよ。