決断

  • 2025.10.15

 経営者の仕事は山ほどあるが、その中で重要なものの一つに「職場環境を整える」ということがある。通院患者数は時間経過とともに増えているしこれからも増えるわけであるが、スタッフ数をそう簡単に増やせるものではない。処理しなければならない業務量は増えるものの、それをいかにシステム化で対抗しスタッフの負担軽減および労働生産性の向上に結びつけることができるかという点が重要である。ちなみに、マニュアル化はシステム化の極々一部にしかすぎない。

 この「システム化」において、当院で大きな役割を担ってくれているのが、本ブログに度々登場する「AI電話」である。滋賀県の医療機関では当院が初導入である。

 まだまだ発展途上つまり完成品とはとても言えないものであるにも関わらず、なぜそれをいち早く導入しようと思ったのか?それは、「電話を受けるという業務によりスタッフの時間が奪われ労働生産性が大きく損なわれていたから」である。受け手側は「電話が鳴れば取らなければならない」という世界共通の摩訶不思議な強迫観念により苦しめられているのである。クリニックや病院に勤務している人ならお分かりであろうが、連休明けの勤務は「電話の嵐」という恐怖でしかない。

 当院のスタッフは3名しかいない。1名が有給休暇を取れば2名で対応しなければならない。前回のブログでは「桶狭間の戦い」と表現したが、この戦力で戦うには電話というものへの対策が必要と考えたわけである。クリニックにかかってくる電話は110番や119番のように緊急性のあるものはほぼ皆無である。その大半は「予約変更希望」というものであり、電話がかかってきたその時間に直ちに処理しなければいけないものではない。AI電話が導入になってから色々言う患者さんはいるが、その多くの意見を文書化してみれば、「自分の都合の良い時間に緊急性のない件で相手の状況も分からずに電話をかけてみたけれども電話が繋がらないことに不満がある」となる。人は変化を嫌う生き物だ。単に感情だけでこのような意見をされたとしても、クリニックにいる目の前の患者さんの対応を遮ってまでその電話を優先すべき合理性は全く見いだせない。

 スタッフの数が減ったにも関わらず業務量が増えている状況で残業を減らす・・・これはトップの決断にかかっている。経営者の日常は、決断・決断・決断・決断・決断の連続だ。これが経営者以外の人には残念ながらまず伝わらない。決断は「断つことを決める」こと。「断つことは捨てること」であるから、それを支持している人たちからは反感を買うことになる。政治でもそうだが、決断できないリーダーは無能だ。結局のところ自分が嫌われたくないから決められない。責任を負うことから避けようとする。安藤広大さんの「検討しますは全裸より恥ずかしい」という言葉は正にその通りだ。アンチのプレッシャーに打ち勝って信念を貫ける人でなければならない。変えるとはそれだけ大きなエネルギーを必要とするのだ。

 決断という言葉の重みを真に理解できる人は一握りしかいない・・・・・