メトトレキサート・・・本当にその量でいいのか?

  • 2024.09.10

 今回は久しぶりにお薬のお話をしようと思います。関節リウマチ(RA)診療におけるアンカードラッグであるメトトレキサート(MTX)についてです。

 「関節リウマチ診療ガイドライン2024」にも明示されている通り、RAの診断がつけばまずMTXの使用を検討します。しかし、そのMTXの使い方に熟知していなければ、そのポテンシャルを十分に発揮することができません。今回はその点について言及したいと思います。

 従来型合成抗リウマチ薬(csDMARD)には、10種類以上の薬剤が保険収載されています。しかし、現在実際に使用されるものは、MTXやタクロリムス(プログラフ®)、イグラチモド(ケアラム®)、サラゾスルファピリジン(アザルフィジン®)、ブシラミン(リマチル®)などに限られます。

 その中で最も用量の幅が大きいものがMTXといってよいでしょう。例えば、イグラチモドは25mg/日で開始して、4週間後以降に50mg/日への増量を検討するわけですが、50mg/日を超えて投与することはありません。一方、MTXは通常、6~8mg/週で開始し、最大16mg/週まで増量可能です。MTXの皮下注射製剤であるメトジェクト®についても、7.5mg/週・10mg/週・12.5mg/週・15mg/週の4剤型が存在します。

 MTXの用量の幅が大きいところにリウマチ専門医の腕の見せ所があるわけでして、リウマチ専門医によって大きな差が出るところと言ってよいでしょう。MTXの使い方を見れば、リウマチ専門医の実力が分かってしまうと言っても過言ではありません。

 他院から来院される患者さんのMTX用量をみてみると、MTX4mg/週や6mg/週と非常に用量が少ない方が多い印象を受けます。もちろん、その量でRAの疾患活動性が臨床的寛解を維持されていれば問題ないのですが、えてしてRAの状態が悪いのです。

 過去に嘔気などの消化器症状や肝障害などの副作用が生じたため、やむを得ず減量せざるを得なかったのであれば理解できます。しかし、そのようなエピソードが確認できないのも関わらず、低用量でRAの状態が悪い・・・これは医師の責任が大きいと言わざるを得ません。これは、処方医がMTXの使用に慣れていないか、MTXの増量を過度に恐れていることに起因しているように思います。

 当院のホームページの「院長の情熱(治療について)」の最後に、診療データ(2024年4月)を載せておりますが、当院でのMTX使用量は10mg/週以上が54%です。4mg/週や6mg/週の方もごく僅かにおられますが、これらの方は以前10mg/週や12mg/週を使用して長期間にわたって寛解を維持しているがために、ゆっくり減量を進めてきた方です。

 MTXの投与量が中途半端であれば関節炎を抑えることは困難ですし、高額な生物学的製剤やJAK阻害薬を不必要に導入することになります。

 もし、読者の中に、副作用が今までないにも関わらずMTXを4mg/週や6mg/週でしか使用されたことがない方がおられるのであれば、一度当院へ相談いただいても構いません。触診と関節エコーを用いて、その用量が適切かどうか判断させていただきます。