「採点」

  • 2024.10.03

 20年以上もの間他院に通院されていた関節リウマチ(RA)患者さんが当院へ転院されることがある。その理由は転居や前医の閉院など様々であるが、長年にわたり患者さんの人生の伴走者としてRA診療を担ってこられたという事実は尊敬の念に堪えない。

 翻って自らに照らし合わせた時どうであろう?以前にも何度か書いている通り、当院の借地契約は残り22年半である。私が無事にそれを全うでき、現在診ている患者さんがその時にも当院を選択されていたとした場合、どのような感情を抱かれるのであろうか?患者さんは幸せであったと思えるのだろうか・・・

 RA治療薬として様々な選択肢を提示できるようになった現在、学会が言うところのRA患者さんの幸せとは「関節破壊が進行しないこと」なのかもしれない。一方で、人の幸せとはそのようなステレオタイプの物差しで測れるものではない。当然ながら価値観は人によって様々であり、時に医師にとって不幸と思うことでさえ患者さんは不幸と捉えていないこともある。

 当院が閉院となった時に、患者さん一人一人から「採点」が下されるわけである。父はその結果を知ることはなかった。果たして私の場合はどうであろうか?そして仮にそれを知る機会を得たとして、その時の私はどう思うのであろうか?