関節リウマチ診断の難しさ(その5)

  • 2024.08.31

 「レントゲン撮りましたが、骨には異常ありません」

 関節の痛みがあって医療機関を受診すると、しばしばこんなフレーズを医師から聞くことでしょう。

 「痛み止めと湿布出しときますね。もし、痛みが強くなったらまた来てください。」

 そんな締め括りの言葉を土産に、診察室を後にする患者さん・・・きっと、その医師からすれば決して特別な言葉ではなく、日常茶飯事なのでしょう。

 「内科診断学」という言葉があるが、総合内科医が身に付けなければならないものの一つである。患者さんが訴える症状から想起される疾患をいくつも挙げ(鑑別診断)、その疾患を確定あるいは除外するために必要な問診や身体診察、そして各種検査を行い、診断を絞っていく過程を指す。

 先程の医師の言葉に、内科診断学の欠片もない。想起されるいくつかの疾患が全て必ず骨に異常が出るのであれば何の問題もない。しかし、その中の一つに関節リウマチ(RA)があったとすればどうだろうか?

 RAは関節の滑膜に炎症をきたす疾患である。時に、腱鞘の滑膜にも炎症をきたす。関節滑膜炎が持続性となれば関節破壊が生じる。関節破壊が生じるまでに至った場合には、レントゲンで骨の変化が認められるわけだが、そうでない場合にはレントゲンで何も変化がないからと言ってRAを否定する根拠にはならない。つまり、先程の医師のフレーズは、RAが鑑別診断として想起される場合、患者さんへの説明として誤っているということになる。

 関節滑膜の炎症や腱鞘滑膜炎をみるためには、関節エコーやMRI検査が必要である。MRI検査は高価で簡単にオーダー予約ができるものでもないし、一度に多くの関節を撮影することができない。一方で、関節エコーはMRIと比較しより安価で診察室で施行でき、多くの関節を一度にみることが可能である、ただし、関節エコーの技術習得には時間がかかるため、リウマチ専門医であっても施行できる医師は少数派である。

 当院では、日本リウマチ学会登録ソノグラファーの資格を有する看護師がいるが、全看護師にその資格を取ってもらうため急ピッチで関節エコー指導を行っている。その心は・・・

 「田舎であっても都会と遜色のないレベルのリウマチ診療を提供する」

 「目標リウマチ患者数は1000人」

 RA患者さんが他院にかかっていたとします。「あんた、なんでリウマチやのに宮本先生のところかかってへんの?」こう周りから言われるようになれば、私の成功と言えるでしょう。

 スタッフ全員がそれぞれ自ら高い目標を設定しなければ達成できないことです。そしてスタッフを信じるしかないでしょう。私が自ら選んだスタッフですから。