人が忌避するもの

  • 2024.06.11

 芥川龍之介の「羅生門」にあるように、疫病や飢饉などにより、町中に屍がゴロゴロとしている時代があった。そうでなくとも、長らく人類の死因の第一位が感染症であったわけで、抗生物質のない時代には、死を身近に感じる機会が人には多くあった。  人はいつから「死」を日常生活から排除するようになったのであろうか?  私は死について考えない日は一日もない。こんなことを言うと、暗い奴と思われる読者も多いかもしれない。しかし、生と死はそもそも表裏一体のものである。死について考えるということは、生につい...

ある無医村の話

  • 2024.06.08

 これはある無医村の話である。  その村の人口は2300人。ほとんどが高齢者であり、何らかの疾病を有していた。この小さな自治体にはもちろん病院はなく、診療所はあるのだが、週に1回だけ隣町から医師がやってきて診療に従事していた。  病を有する村人たちは、この週1回の診療を心待ちにしていた。自らの健康がそのたった週1回の診療に委ねられているのだから、それも当然のことであろう。診療所の待合い室はいつも患者さんでごった返し、診療所の外にまで診察を待つ患者さんが列をなしていた。  医師...

本日は南彦根でリウマチ相談会を行いました。

  • 2024.06.08

 本日土曜日外来終了後、南彦根のビバシティへ移動し、リウマチ相談会を行いました。当院開院以来定期的に行っているもので、毎年6月と11月に開催しています。  今回で4回目になりますが、前3回はすべて長浜での開催でしたので、湖北医療圏を越えての開催は初めてです。その狙いには、彦根市を含めた湖東医療圏には、整形外科クリニックはたくさんあるものの、リウマチ専門医が少ないという実情が背景にあります。  関節リウマチ治療の選択肢は非常に多くなったにも関わらず、もしかすると適切な治療を受...

鮒ずしと共に

  • 2024.06.08

 滋賀県は海なし県ですが、有人島があるのをご存じでしょうか?  琵琶湖には「沖島」という島があります。今から約35年前のことになりますが、私が堅田小学校在籍の時に、社会科の授業で沖島を訪れ、沖島小学校の生徒と交流を持った記憶があります。  今回は、沖島在住の方からいただいた自家製の鮒ずしを日本酒と合わせてみました。発酵食品の場合、乳酸を強く感じられる生酛・山廃系の日本酒が極めて相性の良い選択になります。  菊姫は非常に有名な銘柄であり、ご存じの方も多いと思いま...

山霧

  • 2024.06.07

 霧がかった山を登る。山の頂はおろか、10m先も見えない。自らが登っているのか、下りているのか、それすらも分からない。  見えないものを信じることは非常に難しいことである。確かにそこに「ある」と視認できてこそ、人は安心し、それに向かって進むことができる。  時にその霧が晴れ、山の頂が見える。その姿は遥か彼方にある。そしてまた霧の中を進む。再び霧が晴れ、山の頂が見える。その光景は、先程と全く変わらない。その時、自分の無力さに打ちひしがれ、愕然とする・・・  しかし、この心理状況...

当院の関節リウマチ診療データ(2024年)

  • 2024.06.01

 現在当院通院中の関節リウマチ(RA)患者数は260名を超えており、抗CCP抗体陽性の方は186名を占めます。今回、その内の177名のデータが揃いましたので公表致します。  疾患活動性については、DASよりも厳しい基準であるCDAI・SDAIで、低疾患活動性以下が約90%と極めて良好な結果でした。 【年齢】 平均値:63.6歳 中央値:64歳 【男女比】 男性:19% 女性:81% 【罹病期間】 2年以内:12% 3~5年:12% 6~10年:28% 11年以上:43%...

リウマチだより 6月号

  • 2024.05.31

 今回も前回の4月号に続いて骨粗鬆症に関する話題を載せました。  骨粗鬆症は本邦に約1280万人の患者さんがいると推測され、関節リウマチは続発性骨粗鬆症をきたす代表疾患です。我々リウマチ専門医は、骨粗鬆症診療にも精通する必要があります。 f7b4ff0bb6920d277da4f1faf54e72fbダウンロード ...

心のリフレッシュ

  • 2024.05.26

 今週は体力的にも精神的にも負荷の大きい1週間でした。世の中には理不尽というか、全く理解不能なことが自らの身に降りかかることがあります。そのようなことが日常生活に占める割合は、非常に小さいのですが、ジャックナイフのように心を切り裂き、そしてえぐるのです。  話は変わりますが、SAKE DIPLOMAのテイスティング練習は考えすぎるためのか、完全にドツボにはまってしまっているような状態で・・・気分転換のために、純粋に飲みたいと思うお酒を楽しもう!と昨日の診療後に買ったお酒が下の写真です。...

湖北医療圏の病院とクリニックのリウマチ連携

  • 2024.05.23

 本日は木曜日ですので近江八幡での外勤でしたが、勤務終了後19時から間質性肺疾患合併関節リウマチの講演を拝聴しました。  間質性肺疾患合併関節リウマチでは、その程度によってはメトトレキサートを使用しにくい症例もありますが、疾患活動性をしっかりと抑えることが重要であり、過度にその使用を恐れることが結果的に患者さんにとって不利益になる可能性があることを肝に銘じる必要があります。JAK2を抑えるバリシチニブなどが治療選択肢の一つになる可能性もあります。  この講演は、市立長浜病院...

折り紙という発想

  • 2024.05.20

 本日も、全身性エリテマトーデス(SLE)の講演を21時まで聴講しました。SLEにつきましては、先日もブログにあげましたが、いかに免疫抑制剤を使いこなしてグルココルチコイドの減量を進めるのかが大変重要な課題です。  ところで、2日前のブログにスタッフが折り紙を載せています。皆さん読まれましたか?  折り紙作品は、いつ頃から始まったのか私の記憶は定かではありませんが、すでに1年前の初夏にはカエルの作品が院内にあったような気がします。その後も季節毎の作品を、スタッフが診療の合間...