リーダーとしての素養

  • 2023.08.02

 医師になる者の多くは中学受験を経験する。東京などでは小学受験を経験している者も多いだろう。かくいう私も、中学受験を経験し中高一貫校に通った後、大学受験をして医学部に入ったわけである。  受験というのはいかに他人よりも高得点を取るかという個人競技であり、点数だけの一つの物差で「優劣」が決まってしまうものである。何が言いたいかというと、このような人間がクリニックを経営しリーダーとなった時に、果たしてリーダーとして適した素養を持ち合わしているのかということである。  私は中学時代に、孔...

当院の関節リウマチ診療の実情

  • 2023.07.26

 当院に現在通院中の関節リウマチ患者さんは、約240名です。抗CCP抗体陽性の方は160名を超えますが、そのうち140名の方のデータがまとまりました。  疾患活動性は、寛解・低疾患活動性・中疾患活動性・高疾患活動性の4つに分けることができますが、CDAI(シーダイ)およびSDAI(エスダイ)という指標でみてみると、寛解が60%、低疾患活動性が35%と、寛解と低疾患活動性を合わせて95%という結果でした。グルココルチコイド(ステロイド)の使用率は2.9%と極めて低く、メトトレキサート(MT...

熱中症とメトトレキサート

  • 2023.07.25

 近畿も梅雨明けしてから暑い日が続きます。西日がクリニックに差し込むため、午後の診察室の温度が上がります。この先しばらくは冷房が欠かせない日々ですね。  さて、タイトルの「熱中症とメトトレキサート(MTX)」ですが、皆さん関連は分かりますでしょうか?MTX内服中の患者さんは、この夏場が最もその副作用に注意が必要なのですよ。  MTXは尿をつくる臓器である腎臓から排泄されますが、夏場は汗をかきますので脱水になりやすく、腎臓の機能は低下します。その結果、MTXの腎臓からの排泄が低下し、...

7/27講演会(医療従事者向け)

  • 2023.07.20

 木曜日は近江八幡での外勤ですので、近江八幡勤務後在来線で米原まで出た後、特急『しらさぎ』に乗って福井に向かいます。スケジュールはタイトですが、久しぶりの県外での対面式講演であり楽しみにしています。  さて、講演内容ですが、昨年11月の『メトジェクト皮下注』の発売開始に伴い、メトトレキサート(MTX)の使い方について改めて考え直そうというものです。RAと診断されれば、禁忌事項や年齢・腎機能・肺合併症等を考慮して最初に投与を検討する薬剤がMTXであるため、生物学的製剤やJAK阻害薬も重要で...

リウマチクリニックを受診する契機として最も多い疾患は?

  • 2023.07.19

 私のクリニック『リウマチ科みやもと』は、関節リウマチ(RA)の専門クリニックであり、現在継続して通院されている患者さんの約75%がRAです。  しかし、初診で来院される患者さんの多くはRA以外の疾患です。では、その中で最も多い疾患は何だと思いますか?実は、『更年期障害に伴う関節症状』なのです。  『更年期障害』というと、のぼせ(hot flush)や動悸、発汗過多といったイメージが強いかもしれません。意外と知られていませんが、手のこわばりやあちこちの関節の痛みといった関節症状もし...

7/13講演会(医療従事者向け)

  • 2023.07.10

 今回の講演会は、関節リウマチ(RA)を診ている整形外科医と内科医とがそれぞれの立場から講演するという企画です。せっかくのコラボ企画ですので、私は整形外科の先生が(内科医もかもしれません)普段遭遇することが滅多にないような症例を用意しました。  「尿から見た関節リウマチ」ってどういこと???と思われるかもしれませんが、RAは決して関節だけが障害される疾患ではないということ、侵襲なく簡便な尿検査が気付きの大きな機会になるということを是非知ってもらいたいと思います。答えは今までのブログの中に...

吉村秀雄商店(和歌山県):車坂 生酛純米酒 2019BY

  • 2023.07.07

 昨日は木曜日のため、外勤先の近江八幡での勤務でした。私が世話人を務めている湖東リウマチ膠原病研究会が夜にあるため、勤務終了後近江八幡界隈をブラブラしてみました。  近江牛を扱っておられる『西川』は、30年以上前に父母・兄弟・祖父母と行ったことのあるお店です。祖父はステーキをペロッと平らげていた記憶があります。これが健康の秘訣なのでしょうか?父が亡くなる1ヶ月前には、「もう一回家族で西川に行きたいなぁ」と言っていました。結局それが実現することはありませんでしたが、まさかお店を前にして祖父...

関節リウマチと診断することの難しさ

  • 2023.07.01

 関節リウマチ(RA)診療を行っている医師に、「関節リウマチの診断は簡単ですか?」と質問をしたとします。もし、「そんなのは簡単だよ」と答える医師がいたとすれば、その医師は『真』のリウマチ専門医ではありません。関節のあちこちが腫れていて、リウマトイド因子(RF)と抗CCP抗体が共に非常に高くて、CRPも高い・・・こんな典型的なRAしか診たことがない医師なのでしょう。  どんな疾患でもそうですが、典型的な経過・検査値異常を呈する症例ばかりとは限りません。専門医が専門医たる所以は、非典型例をい...

関節エコーが教えてくれること

  • 2023.06.25

 当ブログで関節エコーは『リウマチ医にとっての聴診器』というお話は繰り返ししてきました。しかし、関節エコーを日常診療で使用しているリウマチ医がまだまだ少ないという現状があります。その一番の理由は、関節エコーを使いこなすには手技の習得が必要であり、その手技の習得にそれなりの時間を要するということです。しかも、恵まれた環境でなければ、それを教えてくれる人が身近にいないという点が、関節エコーの普及の大きな障壁となっています。  かくいう私も、周りにそのような人がいないので、関節エコーの本を何冊...

アクテムラ・ケブザラ投与中、どのようにして関節リウマチを評価するのか?

  • 2023.06.18

 生物学的製剤(BIO:通称バイオ)は強力な抗リウマチ作用を有します。メトトレキサート(MTX)などの従来型合成抗リウマチ薬投与で効果不十分と判断された場合、その使用を考慮するものです。  BIOには作用機序の異なる3系統(TNF阻害薬・IL-6阻害薬・T細胞選択的共刺激調節薬)の薬剤があり、後続品であるバイオシミラーを除くと、9つの先行品があるのですが、IL-6阻害薬には、アクテムラとケブザラの2つの薬剤があります。  当ブログで、「CRPが正常であっても、関節リウマチ(RA)の...